関西支部技術賞

平成29年度 土木学会関西支部技術賞

  土木学会関西支部では、土木技術の進展に著しい貢献をした優れた業績を表彰する「土木学会関西支部技術賞」を選考し、平成29年度は技術賞 5件、技術賞部門賞 4件を決定しました。
  表彰は平成30年5月10日午後3時から建設交流館で開催される「土木学会関西支部第91回支部総会」で行われ、受賞者には賞状及び楯が授与されます。


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技術賞

【対象業績】
ETCを活用したシールド発生土運搬管理システム~大和川線での適用事例~
【受賞者】
阪神高速技術株式会社

ETC自動認証中のシールド発生土運搬車両

阪神高速道路株式会社
【受賞内容】

 産業廃棄物の処理工程管理には、運搬車両ごとに産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付が義務付けられている。しかし、大量の産業廃棄物を排出する現場では大量のマニフェストが発生し、その管理は排出事業者、収集運搬業者及び処理業者にとって多大な負担となっている。本業績では、次の技術を導入することにより、産業廃棄物の処理工程に大幅な効率化を実現した。

  1. 現場ごとにETCゲートを設置し、ETC車載器の無線通信を利用して、車両がゲートを通過することで自動認証を行い、トラックスケールと連動し、ETC認証情報をもとに、計量日時、車両番号,積載物の入力など自動で実施するシステムを新たに開発した。これにより各現場で電子マニフェストの入力作業を大幅に軽減し、パソコンや携帯端末からの入力操作も不要なため、導入も比較的容易で、人為的な操作ミスも極めて少なくなる利点がある。
  2. 同システムにGPS車載器を搭載し、リアルタイムな運行管理を実現した。これにより、車両故障や交通事故が発生した対象車両と発生場所の特定や周辺の渋滞状況の把握が可能となり、迅速な対応ができトレーサビリティの向上が図られた。

 これらの技術の導入により、マニフェスト交付に係る人員の省力化が実現され、更には車両運行時の周辺道路の滞留を回避することができ、地域住民への影響を最小限に留めることができた点を高く評価された。


【対象業績】
関西圏最大級断面のシールド施工 ~都市計画道路大和川線シールド工事~
【受賞者】
大阪府都市整備部富田林土木事務所
大阪市交通局

シールド施工完了(左上:シールド、右上:御堂筋線交差部)

大鉄工業株式会社
株式会社大林組
【受賞内容】

 都市計画道路大和川線は阪神高速道路4号湾岸線と同14号松原線を連絡する延長約10kmの自動車専用道路である。本工事ではその内往復で約4kmの部分において、関西圏では最大級の掘削外径(φ12.54m)となるシールドトンネルを築造した。
1.大断面シールドの掘進管理方法の確立
 施工にあたり、多数の近接構造物や併設シールドが存在する中、事前に施工リスクの抽出と外周部への可塑性材料の充填などの対応策の策定を行った。それに基づきチャンバー内塑性流動管理法などの掘進および計測管理法を実施したことで、地下鉄営業線トンネル直下わずか2.2mの離隔(≒0.16Do)という非常に近接した条件でも、影響を最小限(隆起量2.1mm<管理限界値10.2mm)に抑制して通過することができた。
2.施工ステップを考慮した影響解析手法の適用
 シールド掘進が近接構造物に与える影響解析では、応力解放率のみで地盤への影響を評価するのが一般的であるが、今回、シールド掘進時の各施工ステップ(切羽到達時、シールド前半通過時、後半通過時、テール通過時)の状態をモデル化して解析を行い、より実際の挙動に近いものを再現することができた。
 近接構造物への影響を最小限にするための影響解析方法と、それに基づく掘進管理方法の確立と実施により、関西圏最大級のシールド工事を無事に完了したことを高く評価された。


【対象業績】
硬質地山におけるトンネル発破低周波音消音器を用いた環境配慮施工事例
【受賞者】
国土交通省近畿地方整備局豊岡河川国道事務所

トンネル発破低周波音消音器

株式会社大林組
【受賞内容】

 兵庫県豊岡市に位置する八鹿日高道路の久斗トンネルは、坑口部が閑静な住宅地に近接しており、掘削時に行う火薬発破から生じる工事騒音は、非常に広帯域かつ大きく、特に低周波音は窓ガラスや扉のガタツキ等の原因となり、細心の施工時の工夫が必要であった。従来の工事騒音への対策として、重厚なコンクリート製の防音扉が用いられていたが、可聴音には有効だが、低周波音には効果が限定的であった。そこで、本工事では、この防音扉を設置したうえで、以下の技術を採用することとした。

  1. 住宅地にもっとも近い範囲では火薬を用いないで済む大型掘削機を採用し、工程の許す最大限の範囲で施工を行った。
  2. 火薬を使用する範囲では、騒音の少ない発破特殊電子雷管を採用した。
  3. トンネル発破低周波音消音器を採用し、特に低周波音を低減した。

 この消音器では、片側を閉じた管に音波が入射すると、端部で跳ね返り、反射音波が生じる。この管の長さを波長の1/4 とすると共鳴現象が起こり、開口部付近の入射波と反射波が、お互い打ち消し合うことを原理にしている。これにより、低周波音を約5dB低減する効果が得られた。
 これら技術の導入により、トンネル掘削に生じる騒音を継続的に管理値以下に抑制し、地元住民からの苦情を発生させずに、かつ工期内に工事を完遂したことを高く評価された。


【対象業績】
高速道路供用下でのASR損傷橋脚梁のリニューアル(西船場JCT)
【受賞者】
阪神高速道路株式会社建設・更新事業本部大阪建設部
清水建設株式会社関西支店

軌条設備上に自走式油圧ジャッキ架台を組み立て,切断したRC橋脚梁ブロックを空頭制限を受けない桁外側まで引き出している状況.

【受賞内容】

 西船場JCT改築事業は、利便性向上等を目的に1号環状線と16号大阪港線とを直結するための付加車線及び渡り線を新たに建設するものである。既設RC橋脚梁を拡幅する際に、ASRが原因の橋脚のひび割れ等の損傷による強度低下が確認されたため、特に損傷が著しい4基の橋脚梁部の撤去・再構築が必要となった。本工事は、高速道路を供用したまま橋脚梁部の撤去・再構築を行う前例のないプロジェクトを以下の技術を駆使することで施工した。

  1. 本線の仮受け期間が長期に及ぶため、仮受け構台はより厳しいレベル2地震動に対する安全性を確保しつつ、経済性に配慮し合理的な設計法を新たに確立し実施した。
  2. 本線仮受け構台の構築では、主要幹線道路(中央大通)の交通を阻害せず、切り替えながら迂回ルートを確保した。
  3. 本線仮受け構台の施工に際し、低振動、低騒音及び無排土で施工が可能な回転貫入鋼管杭工法を採用し、周辺環境への負荷の最小化に努めた。
  4. 既設梁撤去及び再構築に際し、本線を供用しながら自走式油圧ジャッキ架台を用いた撤去工法を採用し、安全に撤去作業を完了した。

 これらの技術を駆使しながら、狭小かつ上空制限が極めて厳しい桁下空間で、高度な施工管理を行い、安全性に配慮しつつ一定の品質を確保し、施工を完了したことを高く評価された。


【対象業績】
シールド工事で創造する浸水対策・合流式下水道の改善と魅力溢れる地下空間
【受賞者】
大阪府東部流域下水道事務所

中央北増補幹線 一次覆工の状況(プロカメラマン撮影)

大成建設・村本建設・中林建設共同企業体
【受賞内容】

 公共事業をとりまく厳しい財政事情の下、建設コスト縮減の取り組みとして、浸水被害の軽減を目的とした下水道増補幹線の整備と、雨天時に河川へ放流される汚濁物質量の削減を目的とした貯留施設の整備という2つの事業を、一括施工のシールド工事(セグメント外径6m、工事延長約2744m)により実現させた。

  1. シールド掘削する土層は、軟弱な粘性土層から硬質な砂礫土層まで、多岐にわたるため、マシンのカッターフェイスの改良と土砂取込口を大きくするなどの工夫で対応した。
  2. シールド掘削が、近鉄けいはんな線(地下区間)および阪神高速東大阪線、近畿自動車道吹田天理線、JR学研都市線の多くの橋脚基礎と近接するため、綿密なトライアル施工や徹底した掘進管理を行い対応した。
  3. シールド到達が立坑へのR=60の曲線施工となり、非常に難易度が高かったが、通常の3倍の頻度での測量等により無事に完遂した。
  4. 若手技術者の育成を目的として、シールドマシーンの軌跡を自らの手で描き掘進監理する方法を取り入れた。
  5. プロのカメラマンにより現場写真を撮影し、これら作品を公開することで公共工事、建設業界のイメージアップの推進を行った。

 本業績は、多岐にわたる技術を駆使し、浸水対策と合流式下水道の改善を目的とした二つの事業を、一本のシールド工事として計画、施工することでコスト縮減と合理化を図るともに、人材育成を兼ねた掘進管理およびプロカメラマンの写真撮影による土木のアピール、環境改善の視点を取り入れたことを高く評価された。


技術賞部門賞

【対象業績】
JR阪和線東岸和田駅付近高架化事業 ~高架化完成と駅を中心としたまちづくり~
【受賞者】
西日本旅客鉄道株式会社

高架化されたJR阪和線 東岸和田駅

前田建設工業株式会社
鹿島建設株式会社
清水建設株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
【受賞内容】

 本事業は、東岸和田駅を含む下松駅~東貝塚駅間約2.1kmの線路を高架化し、踏切除却による道路交通渋滞及び踏切事故の解消や東西地域分断を解消するものであり、その施工においては、鉄道利用者等の安全性向上のため、ホームの安全対策、コンクリートの品質向上及び工期短縮に取り組んだ。

  1. ホームの安全対策としては、水溜り、滑り等を解消するために、ホーム舗装に排水性舗装を採用するとともに、ホーム上屋柱を1本柱化させ、柱と柱の間隔を広げ、利用者の移動の障害となる柱の本数を減らすことで、安全性の向上を図った。
  2. 施工段階でのコンクリートの品質向上を目的に施工会社と発注者の現場部門に加えて、発注者の間接部門も出席する「品質確認会議」を実施するとともに、コンクリート表層品質の評価手法として公益財団法人鉄道総合技術研究所とJR西日本で検討を進めてきた「散水試験」を導入した。
  3. 用地の制約上、1線ずつの仮線方式を採用したため、下り線高架後、上り線高架は、下り線高架と仮上り線に挟まれた狭隘な環境で施工を強いられたが、門型支保工や仮上り線上空への工事用桟橋、タワークレーンを採用することにより複数高架橋の同時施工を実現し、工程短縮を図った。

 本業績は、道路交通の円滑化、鉄道輸送の安全性の向上及び地域の活性化に大きく寄与するとともに、鉄道利用者等の目線から、ホームの安全性対策、コンクリートの品質向上、工期短縮が図られていることから「喜ばれる技術」として評価された。


【対象業績】
新名神アクセス 高槻東道路五領高架橋の整備~名神・JR上連続高架
【受賞者】
大阪府都市整備部

名神高速道路上の桁運搬時(写真提供:宮地・東骨特定建設工事共同企業体)

【受賞内容】

 五領高架橋は、高槻東道路(新名神高速道路高槻ICから国道171号に至る一般道路)のうち、名神高速道路、JR東海道線及び阪急京都線を跨ぐ全長564mの連続高架橋である。同橋の整備については、設計協議等に時間を要したこと、新名神高速道路と同時に供用を開始する必要があったことから、複数の供用中の施設を跨ぐ橋梁であることにもかかわらず、わずか2年あまりで工事を完了させるという厳しい制約条件があった。
 特に、名神高速道路を跨る橋桁(径間延長90m)の架設工事は、平成28年の名神高速道路の集中工事期間中の実施が必須条件となり、かつ期間中の一夜間で完遂する必要があった。架設工法については、桁の曲線半径が160mと大きな曲りがあることや名神高速道路内に仮受台を設置できないこと等から、一般的な工法である送り出し架設やクレーン架設の採用が不可能であり、4台の大型自走台車により桁を一括して、地組ヤードから搬送、架設する工法を採用した。
 工事に際しては、一夜間で架設可能な高速道路上の大型自走台車の走行軌跡の検討、架設時間の工程計画、架設ステップを考慮した応力、安定性の検証を入念に行い、一夜間で桁の移動、回転、橋脚への固定まで実施し、架設を完遂することができた。
 本業績は、高速道路および2つの鉄道の上部空間において、これら施設の供用に影響を与えず、限られた時間内で高架橋を架設し、当初の供用予定時期までに安全に工事を遂行したことを「成し遂げた技術」として評価された。


【対象業績】
内空79m2の大断面ボックスカルバートのプレキャスト化への挑戦と施工評価
【受賞者】
西日本高速道路株式会社関西支社新名神大阪西事務所

専用吊具(バランスビーム)による上部材の据付状況

株式会社奥村組
【受賞内容】

 我が国は人口減少時代を迎えており、労働生産性の向上が喫緊の課題である。
 国土交通省等では、i-Constructionの取組の一つとして、工場製作における品質の均等化、効率化および現場作業の効率化が期待できるプレキャストコンクリートの活用に向け、入札契約制度や設計指針の整備、部材の規格化、施工方法の改良等の取組みが行われている。
 このような背景を踏まえ、“生産性革命”と“工程短縮”の2つを目的とし、新名神高速道路東畦野トンネル工事の上り線75m、下り線77mの計152mの区間において、高さ8.4m、幅14.6m、内空断面79m2の大断面ボックスカルバートのプレキャスト化に挑戦した。
 工場製作した各部材(ボックスカルバートを1m幅の152リングに分割し、各1リングを6部材に分割)を、上部材、下部材ごとに異なる施工ヤードで、モルタル充填継手により組立て、特殊仮設備(運搬専用トレーラー、専用吊具)により上下の部材を連結させ、大断面プレキャストボックスカルバートの施工を実現した。
 従来工法(現場打ち工法)の事例と比較すると、10m当たりの作業員人工数は約55%削減でき、工期は約76%の短縮することができた。
 本業績は、最大級の大型ボックスカルバートのプレキャスト化を実現し、建設現場の生産性を向上させた結果、労務作業員の減少と大幅な工期短縮が可能となり、今後のi-Constructionの推進に貢献するという点を「使える技術」として評価された。


【対象業績】
淀川における新しい流量観測手法の導入

枚方観測所に設置したH-ADCP

【受賞者】
国土交通省近畿地方整備局淀川河川事務所
【受賞内容】

 淀川河川事務所では、淀川流域において浮子測法を用いた流量観測を実施しているが、2013年台風18号による洪水時には観測員が退避し、重要な流量データを計測できない事例が発生する等、確実な流量の観測手法の確立が必要となっている。
 淀川流域において、治水計画上の重要性、計測時の安全性、確実性の観点から、4観測点を選定し、超音波のドップラー効果を利用したH-ADCP手法及び動画を用いた波紋の追跡による画像解析法(STIV法)の2つの流量観測法を導入し、4年間にわたり、これら手法の実用性を検証した。
 これら新手法の流量観測結果は、平常時流況から洪水時流況まで、従来の浮子測法の結果と概ね一致し、妥当性および安定性が確認された。また、直接的に流速を観測できるため、従来の浮子測法では正確に算出できなった背水影響時の流量の観測が可能となった。
 今後は大規模な洪水時や高濁度時の計測精度等の課題をクリアするとともに、導入観測所を増やすことで、観測の自動連続化及び無人化による安全性の確保、精度の高い流量データの蓄積による治水計画の精度向上が期待できる。
 本業績は、新しい流量観測手法を先駆的に導入し、今後、治水計画のさらなる精度向上、観測員の安全性確保等に資することが期待できる点を「新しい技術」として評価された。

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