助成事業 [元 調査・共同研究]

土木学会関西支部 助成事業『関西地区に存在する明治期のトラス形式鉄橋に関する調査研究』報告書

 「関西地区に存在する明治期のトラス形式鉄橋に関する調査研究会」(代表 坂下 泰幸((一財)近畿地域づくり研究所 顧問)は、令和5(2023)年度から2箇年をかけて土木学会関西支部の助成を受けて調査を行い、大宮橋が明治7(1874)年に開通した鉄道橋を転用したものであることを示し、これが現存するわが国最古の鉄橋であることが明らかになりました。併せて、これまで未解明だった浜中津橋の上流側主構について、鉄材の性状の調査を行いました。

 詳細につきましては、報告書 (PDF、約1.74MB)をご覧ください。


報告書の序文より…

 大阪市北区に浜中津橋というトラス形式鉄橋が供用されていた。その下流側主構は明治7(1874)年に敷設・開業された大阪~神戸間の鉄道のためにイギリスから輸入された70フィート級錬鉄製ポニーワーレントラス桁を転用したものであること、上流側主構は明治29(1896)年の複線化に際して追加されたものを転用していることが、すでに知られている。その価値が認められて、本橋は土木学会選奨土木遺産に認定されたところである。なお、現在は道路整備に伴う支障物件として撤去され、管理者である大阪市により保管されている。

 一方、最近、大阪府泉南郡熊取町に、形状が浜中津橋に極めて近い大宮橋というトラス橋の存在が知られるようになった。土木学会関西支部選奨土木遺産推薦委員会では、寄せられた情報に基づき簡単な調査を行い、浜中津橋と同じルーツを持つ橋であると推察しているところである。

 しかし、従来の知見は、主に外観の観察や計測により得られたものであって、それを示す直接的な物証に欠けると言わざるを得ない。そのため、本調査研究では、管理者の協力を得て両橋から鉄材の一部を採取してその成分分析を行った。これにより、両橋の異同を明らかにして大宮橋の土木遺産としての価値を明確にするとともに、浜中津橋についてもこれまでの知見を証することを意図して実施したのである。数少ないサンプルではあったが、本調査研究の結果、大宮橋は、浜中津橋の下流側主構と同じ仕様の錬鉄材を使用しており、明治7(1874)年の鉄道橋を転用したものであることが示された。また、浜中津橋の上流側主構についてもその材質を調査し、複線化時に追加された桁であることを実証した。

 本調査研究は令和5年度と6年度に土木学会関西支部の助成を受けており、報告に当たり改めて関西支部に感謝の意を表したい。

 本調査研究の成果について、土木関係者はもとより広く市民と共有することにより、先人が取り組んだ土木事業に対する理解が広まり、併せて貴重な土木遺産の保存・活用が図られることを期待するものである。

令和7年5月
関西地区に存在する明治期のトラス形式鉄橋に関する調査研究会
代表 坂下 泰幸
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