関西支部技術賞

平成28年度 土木学会関西支部技術賞

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技術賞

【対象業績】
明石市内連続立体交差事業における国道2号逆転立体交差工事への新技術導入
国道2号逆転立体交差工事概要

国道2号逆転立体交差工事概要

【受賞者】
兵庫県東播磨県民局加古川土木事務所
山陽電気鉄道株式会社鉄道事業本部技術部
大成建設株式会社関西支店
【受賞内容】

 明石市内連続立体交差事業(第Ⅱ期)では、国道2号が山陽電気鉄道を跨ぐ立体交差部の上下を変え、高架化した鉄道が平面化した国道を跨ぐ難易度の高い逆転立体交差工事を安全かつ円滑に実施するため、以下の新しい技術や手法を採用した。

  1. 既存の跨線橋撤去では、PC鋼棒で横締めされたPC桁を橋軸方向に分割する手順の中で、半割りスリーブを用いたウェッジ圧入による定着方法を新たに考案し、PC鋼棒を中間切断しても残置されるPC桁を健全なまま道路供用させることが可能となった。
  2. 一時的に国道と鉄道が平面交差(仮踏切化)することによる交通渋滞の発生と安全面の懸念には、道路利用者等を交えた住民参画手法を採用し、対策等を決めることで大規模な渋滞や踏切事故の発生を防いだ。
  3. 鉄道高架化のPC箱桁架設工事では、箱桁の一部をプレキャスト化して構築期間を短くし、押出し架設時での横方向の桁位置修正を安全かつ迅速にできる新しい滑り支承を開発した。また、上載荷重による既設躯体の損傷を防止する新しい補強手法を採用し、仮踏切化から鉄道本線高架化までの工程短縮および安全確実な架設を同時に実現した。

 本業績は、これら前例のない新しい技術や手法を難易度の高い大規模な公共事業に積極的に導入し、今後更に活用される新技術として確立実証し、事業を完遂した点が高く評価された。


【対象業績】
京都駅改良工事 ~安全・利便性向上の実現に向けて~
京都駅奈良線ホーム拡幅(完成写真)

京都駅奈良線ホーム拡幅(完成写真)

【受賞者】
西日本旅客鉄道株式会社
大鉄工業株式会社
ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
【受賞内容】

 京都と奈良を結ぶJR奈良線の沿線には観光地も多く、近年では海外からのお客様も増え、京都駅の奈良線ホームや階段では混雑している状態であった。そこで、同ホームを拡幅して混雑緩和を図ることでホーム上の安全性を高めるとともに、他線への乗換通路にはバリアフリー設備(EV、ESC)と階段の新設により、利便性向上を図ることとした。
 ホームの拡幅工事は、使用中のホームを拡幅するため、線路の位置を切換える工事と同時に行う必要があり、限られた時間での施工となる。また、工事が長期間となり、仮設の状態で幾度かの多客期を迎えるなどの課題があった。
 これらを解決するため、仮設ホームの一部本設化や施工の容易な「桁式仮設材」の活用により作業の効率化を図ると共に、ホームの仕上がり状態やたわみ量を事前の試験施工により確認し、現地でも全スパンの仮組みによる確認を行うことで「一晩での大規模なホーム拡幅」を実現させた。また、上家整備においても鞘菅方式のジョイントやハンドリフターによる鉄骨建て方を採用するなど作業の効率化を図り、「多客期を見据えた工程短縮」を実現させた。
 本業績は、供用中の鉄道施設ならではの、狭隘な空間、時間的制約の中、桁式仮設材を採用し、事前のシミュレーションなどを実施し、大規模なホーム拡幅工事を完了させたことが高く評価された。


【対象業績】
KOBEハーベスト(大収穫)プロジェクト
下水汚泥からリンを直接回収、資源化する装置

下水汚泥からリンを直接回収、資源化する装置

【受賞者】
神戸市建設局
【受賞内容】

 下水道に流入するリンは、放流水域の富栄養化を起こし、自然環境に影響を及ぼすだけでなく、下水処理場内ではリン酸塩として析出し配管閉塞を起こすなど、施設の維持管理に支障をきたしている。しかし、わが国においてリンは全量を輸入に依存し、長期的かつ安定的な確保が懸念される貴重な資源である。
 従来技術のリン回収装置は、下水汚泥を嫌気性消化で有機物を分解し、減量化した消化汚泥を脱水した後の粘性が低い脱水ろ液を対象とする流動床式晶析リアクタであり、脱水する前の粘性が高く高濃度のリンを含む消化汚泥を均一に攪拌することが難しいだけでなく、リンの回収率も低かった。
 そのため機械攪拌式晶析リアクタを採用し、粘性の高い汚泥の完全混合が可能となり、わが国で初めて、消化汚泥から直接、高品質なリンを効率的に回収し資源化することに成功し、同時に汚泥中のリン濃度が低下し、リン酸塩の析出が防止され、施設の維持管理性も大きく向上した。
 また、回収したリンが、高品質で肥料製造に優れた形状であったことから、農業関係者が利用しやすい配合肥料を開発し、リン資源の循環利用にも取り組んでいる。
 本業績は、下水処理場の維持管理性の向上とともに、肥料利用の普及拡大を通じて、都市と農村が連携し、農産物とリン資源の地産地消に貢献する取り組みが高く評価された。


【対象業績】
特殊橋梁(追分橋)の大規模地震対策~橋脚更新による全体構造系の変更~
耐震補強工事 着手前(右上)と完成後

耐震補強工事 着手前(右上)と完成後

【受賞者】
西日本高速道路株式会社関西支社滋賀高速道路事務所
三井造船鉄構エンジニアリング株式会社大阪支店
【受賞内容】

 昭和38年供用の追分橋は、名神高速道路の橋長107.0mの鋼3径間連続箱桁橋である。下部構造は水平耐力を持たないロッキング橋脚で、橋台1基で上部構造の慣性力を支持する1点固定構造であり、斜角が最少26°と非常に小さく、構造的に特殊性の高い橋梁である。大規模地震で損傷した場合、橋の下の国道1号線と京阪電鉄の車両・鉄道等への被害が懸念され、耐震性能確保を目的とした事業を実施した。
 当初、既設構造での補強を検討したが、固定橋台基礎の耐力不足が確認されたため「固定-可動支持構造」から「免震構造」へ抜本的に構造を変更し、水平耐力を各支点に分散させる鋼コンクリート複合橋脚へ変更する事とした。
 現地は作業ヤードが狭小で、橋脚形式の仮設構造物の設置が困難なため、既存橋脚が支持している鉛直荷重に影響を与えないよう鋼製梁に開口部を設置し、新設橋脚完成まで支持できるよう改良をすすめた。また、鋼製梁の架設では、既設の構造体が真上にある工事のため、軌条設備及びジャッキアップ設備及びリフトアップ設備を併用することで、工事が円滑に進めることができた。
 本業績は、既設橋梁の構造系の変更に関する新工法の開発と、ロッキング橋脚を有する橋梁において前例の無い新たな耐震補強方法を確立し、大規模地震時の構造物の信頼性を向上させた点が高く評価された。

技術賞部門賞

【対象業績】
研修用不具合堤防の整備と活用について
研修用不具合堤防の全景

研修用不具合堤防の全景

【受賞者】
国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所
【受賞内容】

 管理上危険とされる堤防等の変状箇所は、発見後速やかに修繕されるので、従来の現地研修では目の当たりにできないため、限られた時間で多種多様な変状箇所を点検実習できる専用施設の整備が必要であった。加えて平成27年度より「堤防等河川管理施設の点検結果評価要領(案)」の運用が開始され、施設の必要性がより高まったことから、近畿技術事務所敷地内に堤防・護岸の陥没・空洞化や函渠の抜け上がりなど、21種類・48箇所の変状を再現した実物大の研修用不具合堤防を整備した。
 施設では研修生が堤防の変状を発見・調査し原因究明まで考察させることにより、「的確に点検を行う技術力」のみならず、「点検から得られた情報を基に的確に分析する技術力」も培う事が出来、各種探査機器の実習や実証確認や地域住民等の施設見学等にも活用している。
 また、講師や研修生の意見等を参考に変状の再現性に改良を加えたり、全国の堤防等点検評価結果を元に確認頻度が高い変状の追加再現の実施や、講師用テキストをより実践的な点検評価技術力の向上に役立つように更新するなど改善等を行っている。
 本業績は、研修用不具合堤防の整備により、技術継承、人材育成に大きく貢献することはもちろん、施設を適宜改良し、将来的な河川堤防の適切な維持管理に有効な「使える技術」として評価された。


【対象業績】
短工期を実現した天井板撤去の取り組み ~神戸長田トンネル~
天井板撤去 実証実験設備

天井板撤去 実証実験設備

【受賞者】
阪神高速道路株式会社神戸管理部
鹿島建設株式会社関西支店
【受賞内容】

 神戸長田トンネルは、天井板崩落事故があったトンネルと類似の吊り天井板を有しており、点検で安全性に問題がないことを確認していたが、長期的な安全性確保の観点から天井板を撤去することになった。
 天井板撤去は、天井板に石綿(非飛散性)が含まれることや周辺交通への影響を考慮し、上下線合わせて4.4kmの区間を14日間の終日全面通行止めで実施することが求められた。しかし、この規模の工事を14日間で行った実績はなく、加えて供用中の高速道路で撤去方法の事前検証ができないため、失敗することなく確実に実現できる方法を確立することが課題であった。
 課題達成への取り組みとして、現地と同じスケールと仕様の実証実験設備を設置し、天井板構成部材の撤去方法の考案とその事前検証を半年間にわたって実施した。その結果、石綿含有の天井板を毀損しないで掴み外しができるハンドリングマシンや、隔壁や中央金具を一括撤去できるアタッチメントを採用して迅速で安全な撤去方法を確立することができ、その成果を活かして本番の撤去作業は14日間以内で無事完了した。
 本業績は、4.4kmに及ぶトンネルの天井板を14日で撤去するという通常では実施困難な工事に対し、事前の綿密な検討や実証実験で課題を克服し、無事完成させたことを「成し遂げた技術」として評価された。


【対象業績】
都市部連続立体交差事業における軌道直下での函渠改良事例
完成後の魚崎東陸橋函渠

完成後の魚崎東陸橋函渠

【受賞者】
阪神電気鉄道株式会社東灘工事事務所
株式会社大林組阪神魚崎工事事務所
【受賞内容】

 阪神電気鉄道では、神戸市東灘区の住吉駅から芦屋駅間の約4kmを「安全で快適な」、「機能的で美しい」、「活力あふれる」まちづくりと「快適な高架駅」を目指して、平成9年より連続立体交差事業を進めている。
 そのうち魚崎駅近辺にある極端に狭小な函渠(地下通路)は通行者の安全性確保が困難なため、これを撤去し内空幅の大きい函渠に改良する工事が実施された。
 本工事は営業線軌道直下の狭隘な施工スペースで、列車が止まる短い時間の夜間作業となるため工期が長くなるが、周辺環境、近隣住民との協定などにより、工事による函渠内の通行止め期間を4ヶ月短縮することが求められた。また夜間作業による近隣住民からの苦情等も懸念された。
 そこで当初計画の施工方法を変更し、上床版ジャッキアップ工法により逆巻施工とすることで狭隘箇所での施工が可能となり、鉄道の安全性と躯体品質を確保ができ、さらに、営業線軌道が載る盛土の地盤改良にDCI多点注入工法を採用することにより、営業線運行中の昼間の作業が可能となり、工期短縮と夜間作業をなくすことができた。
 本業績では、困難と予想された工程短縮を実現させ、営業線運行の安全性および函渠の品質も確保し、周辺環境への負荷も掛けることなく工事を無事完了することができたことを「喜ばれる技術」として評価された。


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