平成27年度 土木学会関西支部技術賞
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技術賞
- 【対象業績】
- 緊急仮設橋の開発
- 【受賞者】
- 国土交通省近畿地方整備局近畿技術事務所
- 【受賞内容】
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道路構造物のアセットマネジメントには、平常時の維持管理はもとより、大規模災害時の被害を最小限に留めるための危機管理も加える必要がある。
橋梁の場合、人命救助と緊急支援物資輸送を速やかに行うため、津波や洪水による落橋や流失に備えた措置を講じておくことが有効で、その具体例として、短時間で組立・架設が可能な仮橋を配備することが挙げられる。
国土交通省や資材メーカー等では「応急組立橋」を保有しているが、これは比較的長期間にわたって一般車両の通行に供することを目的としているため規模が大きく、被災者の生存率が急激に低下するとされる発災後72時間以内に設置を完了することは困難である。そのため近畿地方整備局では、桁の連結を従来の添接板による摩擦接合に換え、新たに開発した引張ボルトによる接合を用いて高力ボルトの使用本数を大幅に削減することで、架設時間が大幅に短くなる「緊急仮設橋」を開発した。
本業績は「応急組立橋」が設置されるまでの暫定的措置として、緊急車両の通行だけに限定した時にきわめて短時間で架設でき、かつ多様な支間長、架設工法に対応可能な汎用性のある「緊急仮設橋」を開発し、南海トラフ巨大地震による津波被害が発生した場合に集落が孤立するリスクの高い和歌山県南部に配備したことが高く評価された。
- 【対象業績】
- 重交通等の制約を受ける都市内JCTの新設・改良技術の高度化
- 【受賞者】
- 阪神高速道路株式会社建設・更新事業本部堺建設部
- 鹿島建設株式会社関西支店
- 株式会社横河ブリッジ大阪支店
- 【受賞内容】
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大阪都市再生環状道路の一部を形成する2つのJCTのうち、松原JCTは、14号松原線と近畿道を接続する北西渡り線を整備することで全方向乗り入れ可能なフルJCTとし、三宝JCTは現在整備中の大和川線と4号湾岸線を接続し関空方面対応の出入口を追加整備することで両方向乗り降り可能なフルランプとしたものであり、平成27年3月29日に同時開通した。
本事業では既設橋梁と新設橋梁との接続部は、走行安全性と維持管理性を向上させるため、新旧上部構造を一体化したノージョイント構造とした。松原JCTでは、既設松原線との合流部においてPC箱桁橋を拡幅して一体化する構造とし、接合部のコンクリートを分割施工するとともに床版補強を行うことで既設構造物への影響を抑制した。三宝JCTでは、新旧上下部工を一体化するとともに既設構造物を耐震補強する構造とし、新たに開発した中間定着材を使用した橋脚横梁の外ケーブル補強により、施工の進捗に合わせた部分開通を実現した。
本業績は、重交通等の厳しい制約下で、様々な制約条件に応じた新旧橋梁一体化技術や、施工条件に併せて工程・経済性・環境負荷等を考慮した上で選定した大型クレーン、大型多軸台車等を組合せた既設橋梁撤去技術等を駆使して、都市内JCTの新設・改良を完遂したことが高く評価された。
- 【対象業績】
- 台風や大雨から三宮のまちを守る ~三宮南地区 浸水対策事業~
- 【受賞者】
- 神戸市建設局
- 【受賞内容】
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三宮南地区は、神戸港に面した神戸のウォーターフロントの中心地であるが、平成16年に台風の来襲により4度浸水被害が発生した。神戸市では、このような浸水被害が二度と起こらないよう、緊急整備と恒久整備の二段階に分け内水排除施設の整備を進めてきた。
当該地区は神戸港開港以来、護岸整備が幾度も行われた地区であり、地中に広範囲に残る旧護岸等の地中障害物への対応が大きな課題となった。そのため、巨礫に対応できるカッターと排土土砂の噴発を防止し安全に掘進することが可能なハイブリッドタイプのスクリューコンベアを装備したシールドマシーンの使用や、多量な侵入水を防止するために薬液注入を併用した刃口推進工法の採用など、様々な技術を駆使することでこの難題を克服した。また、中突堤ポンプ場放流渠整備では、日本初のコンクリート中詰め鋼製セグメント気中組立による管渠構築工法を採用し、安全性と品質を確保しながら作業の省力化も実現した。その結果、浸水被害から約10年で事業を概成することができた。
本業績は、都市土木技術の発展に貢献し、また、市民生活の安心・安全の向上、工事現場の市民への公開や景観・安全への配慮等、市民に喜ばれ役立つ事業として、浸水対策事業をPRできた点が高く評価された。
技術賞部門賞
- 【対象業績】
- トンネル変形予測システム『PAS-Def』の開発適用事例
- 【受賞者】
- 国土交通省近畿地方整備局福知山河川国道事務所
- 西松建設株式会社関西支店
- 【受賞内容】
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安全で合理的な施工を目的とし、山岳トンネル掘削時の変形挙動の予測精度向上のため、申請者らはトンネル変形予測システム「PAS-Def(Prediction and Analysis System for tunnel Deformation)」を開発した。本システムは、1.切羽前方探査(DRISS)2.現場計測(A計測等)3.数値解析(FEM解析)の3要素を効果的に組合わせて運用するもので、専用ソフトで計測データ処理や数値解析を一括処理し、探査・計測から変形予測までの一連作業を迅速かつ簡便に実施可能である。
本システムは「丹波綾部道路瑞穂トンネル大簾地区工事」に適用された。この工事では、施工区間に本庄スラストと呼ばれる大規模断層の出現が想定され、土被りも200mを超えることから、掘削時のトンネル変形に対する迅速な対応が必要とされた。適用の結果、予測値は実測値と概ね同様の傾向が得られ、特に本庄スラストの変位増加区間でも変形挙動を精度よく予測できた。本工事で、PAS-Defの予測結果を考慮して計測体制を強化し、掘削を進めた結果、変形増大の対策工を実施することなく本庄スラスト区間を無事通過し、無事故で工事を完了した。
本業績は、長大トンネルの施工において探査、計測、解析の3要素を統合し、工事現場で簡便かつ迅速に変形予測が可能なシステムを構築したことを「新しい技術」として評価された。
- 【対象業績】
- まちづくりに寄与する新駅整備事業 ~摩耶新駅~
- 【受賞者】
- 西日本旅客鉄道株式会社
- 大鉄工業株式会社
- ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社
- 【受賞内容】
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神戸市域では震災復興を契機に「安全で快適なまちづくり」を目指して様々な事業の推進が図られ、JR貨物神戸港駅を移転させたことによる東灘信号場の跡地利用については、神戸市東部の発展に貢献する開発が望まれていた。
このため、六甲道~灘間にある本跡地に新駅を整備するとともに、地域分断の解消を目的とした連絡通路や駅前広場を一体的に整備することにより「まちづくり」に貢献する計画とした。新駅整備事業は、環境にやさしい駅(エコステーション)として新たな技術を採用するとともに、乗降客のホーム上からの転落防止対策としてホーム勾配などの工夫も行った。また、折返し設備を整備することでこれまで課題となっていた輸送障害発生時における列車運休の広域波及が軽減され、輸送品質の向上も図った。
当該区間は6線区間で、1日あたり625本の列車が運行する最も過密な線区である。その線間で駅工事を進めるにあたり施工性や安全性などに配慮したホーム構造や施工手順及び方法などの技術的工夫も行った。本業績は、電車の回生電力を利用することにより、新駅で必要となる消費電力の約50%削減を達成した「エコステーション」として建設したことを「使える技術」として評価された。
- 【対象業績】
- 松原通電線共同溝整備事業
- 【受賞者】
- 京都市建設局道路建設部道路環境整備課
- 【受賞内容】
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京都市では、「景観・観光」、「安全・快適」、「防災」の観点から道路の無電柱化(電線共同溝整備)を推進している。本事業は、清水寺の参道である松原通の「景観・観光」及び「安全・快適」の向上を主な目的として実施された。
これまでの電線共同溝整備は、広い歩道のある幹線道路等を対象にしているため、標準品として使用する設備類が大きく、本事業箇所のように、歩道がない道幅の狭い道路で実施する場合には、通行に支障となる地上機器(電気設備)の設置場所の確保が最大の課題となる。本事業では、地元自治会並びに商店街の方々との調整により、清水寺から理解と協力が得られ、清水寺敷地内に地上機器を設置できたことにより、歴史的景観の確保や観光客の通行時の安全・快適性が向上し、高い事業効果が得られる結果となった。
また、電線共同溝整備に引続き実施した、舗装の復旧工事では、周辺道路との調和を図りながら、清水寺の参道であることなどを考慮し、石畳風アスファルト舗装を実施した。
本業績は、清水寺の参道である松原通において、地上機器の道路外への設置や舗装の復旧方法を工夫することにより、景観や安全・快適性を向上させたことを、整備後数年間の実態も踏まえて「喜ばれる技術」として評価された。