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共同研究グループ「老朽化、および更生した下水道管きょの耐震設計法に関する研究」平成28年度報告書

 共同研究グループ「老朽化、および更生した下水道管きょの耐震設計法に関する研究」平成28年度報告書(PDF:約6.8MB)を掲載しました。
 併せて、平成27年度報告書もご覧ください。


平成28年度報告書の序文より…

 大阪市域の下水道管きょは老朽化が急速に進んでおり、法定耐用年数である布設後50年を経過した管きょが総延長4800kmのうちのおよそ3 割を占める。そのため、老朽管きょの耐震性確保が最重要課題となっており、更生工法による改築更新が鋭意、実施されている。

 一方、日本下水道協会では、東日本大震災を契機として、設計指針である「下水道施設耐震対策指針と解説」(1997,2006)を見直して2014年に改訂版を発行し、さらに設計マニュアルである「下水道施設耐震計算例(管路施設編)」(2001)を2015年に改訂した。一般に下水道管きょは、水道管、ガス管、共同溝などの線状地中構造物に比べて、管材質、形状、口径、埋設深さ、施工法が多種多様であるところに特徴があり、改訂された設計指針(2014)と設計マニュアル(2015)でも対象とする管種は、円形管、ボックスカルバート、シールド管きょを含めて11種類に上っている。

 ところが、この改訂された設計指針(2014)と設計マニュアル(2015)は、旧指針(1997,2006)・旧設計マニュアル(2001)と同様に、土と構造物の相互作用をバネモデルで表す応答変位法を採用しているため、実際とは定性的に異なる管きょの地震時挙動を予測すると推定されること、必ずしも老朽管きょを対象としたものではないこと、大阪市で幹線管きょとして用いられてきた馬蹄形管きょが対象外とされていること、ならびに更生した管きょを対象としていないことなどから、大阪市のように老朽化の比率が高い大都市の下水道管きょに対する適用性は未解明な部分が残っている。

 そこで、老朽化した下水道管きょ、ならびに更生した下水道管きょの断面方向の耐震性の予測手法に関して調査研究を行うことを目的として、土木学会関西支部共同研究グループ「老朽化、および更生した下水道管きょの耐震設計法に関する研究」を組織した。本共同研究グループのテーマは、共同研究グループ設置の目的として記載されている3テーマのうちの「産官学の共同研究テーマ」に該当するものであり、官からは大阪市の下水道担当者がメンバーとして参加し、当調査研究事項に関して、大阪市の現状や抱えている問題点、課題解決の方向性を報告し、産官学が共同して大阪市の老朽管きょ対策、とりわけ耐震化対策の課題解決のための議論を行った。

 平成27年度は、上記の目的を達成するため、健全な管きょを扱っている改訂設計指針(2014)と設計マニュアル(2015)を対象として以下の研究を行った。

  • 下水道管きょの耐震設計法の問題点を整理した。
  • 遠心実験の解析に用いたFEM 解析手法に対して、設計に適用するための改良を施した。
  • 設計マニュアル(2015)に記載された健全な管きょのうちの鉄筋コンクリート管(RC管)と強化プラスチック複合管(FRPM管)の土圧・変形挙動とFEM解析による予測を比較した。

 平成28年度は、昨年度に引き続き、以下の研究を行った。

  • 昨年度開発したFEM解析手法に対して、管面の開口処理に関する改良を施した。
  • 設計マニュアル(2015)に記載された健全な管きょのうちの現場打ちボックスカルバートとシールドセグメントの土圧・変形挙動とFEM 解析による予測を比較した。
  • 老朽化した既設RC 管とこれを更生した管きょの地震時挙動をFEM 解析によって検討した。
  • 設計マニュアル(2015)に記載されたモデル地盤について重複反射法に基づく応答解析を実施し、地震時の地盤変形と動的地盤定数の相違が健全なRC 管とボックスカルバートの土圧・変形挙動に及ぼす影響を調べた。

 なお、本報告書では、改訂設計指針と改訂設計マニュアルを含めて「現行設計法」と呼ぶことにする。

 最後に、本研究グループの活動に積極的に参加されたメンバーの皆様、特に研究会の運営にご苦労を頂いた幹事の皆様には深く感謝の意を表するものである。

土木学会関西支部共同研究グループ
「老朽化、および更生した下水道管きょの耐震設計法に関する研究」
代表 東田 淳
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