2021年度 教員免許状更新講習 開催報告
土木学会関西支部総務・事業支援幹事会では、将来の社会を担う子供たちに暮らしを支えている社会資本整備や災害のメカニズムなどを伝えることが重要と考え、土木と学校教育とをつないでいく取り組みとして、学校教育に携わる教職員の方を対象に講習会を開催しています。
知っておきたい!ダムの種類と役割
日時 | 2021年7月27日(火) |
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場所 | 日吉ダム |
主催 | 国立大学法人 兵庫教育大学 |
共催 | 公益社団法人 土木学会関西支部 |
対象者 | 小学校、中学校、高等学校の教員16名 |
講師 (敬称略) |
川崎 佑磨(立命館大学理工学部准教授) 寺澤 広基(大阪大学大学院工学研究科助教) 髙阪 英樹(独立行政法人水資源機構日吉ダム管理所所長) |
【講習時間割】
09:20~09:25 | オリエンテーション |
09:25~10:15 | 講義1 ダムの種類と役割 |
10:25~12:15 | 講義2・実験実習 コンクリートの特徴と作製 |
13:20~13:50 | 講義3 日吉ダムの概要Ⅰ |
14:00~14:40 | 講義4 日吉ダムの概要Ⅱ |
14:50~16:20 | 見学実習 日吉ダム |
16:35~17:15 | 試験 |
17:15~17:20 | 事後アンケート |
【講義】
講義1および2では、立命館大学・川崎先生からダムの種類と役割、コンクリートの特徴と作製について講義していただきました。まず、ダムが果たす役割や歴史、構造の違いにより水圧に抵抗する仕組みが異なること、ダムが点灯・滑動・破壊しないようにするための工夫について説明されました。続いてダムの建設に大量に用いられるコンクリートについて、その特徴や構成材料の詳細を解説いただきました。講義2の後の実験実習では受講者各自がセメント・細骨材・水を練り混ぜてモルタルを作製しました。この実習を通じて、同じ配合でも特殊な薬剤を加えることによりモルタルに流動性が付与されること、水中に入れても分離しないモルタルを作製できることを実感できました。
講義3および4では、水資源機構・髙阪様から日吉ダムの役割や豪雨時におけるダムの放水量操作などの対応について説明していただきました。ダムが担う治水と利水の役割や、豪雨時における下流域の水位と日吉ダムの放流水量の操作をリンクさせた解説があり、過去の豪雨で日吉ダムが水量調節にどのように貢献しているか、また、下流域の河川改修の必要性について詳説されました。
【見学実習】
見学実習では、受講者にヘルメットを装着してもらい、日吉ダムの外観や堤体内部を見学しました。蓄えた水を放出する洪水吐設備や、ダム本体が基礎岩盤から大きく移動していないことを確認するためのプラムライン室、ダム内部の漏水量を計測する設備など、日吉ダムの一般開放している部分以外の設備も含め見学させていただき、ダムの構造について理解を深めました。
【履修認定試験、事後アンケート】
講義および見学実習後に、講習内容に関する履修認定試験を実施しました。その後、事後アンケートに回答していただき、解散としました。
【講座の様子】
【アンケート結果】
知っておきたい!地図の作り方と使い方,ハザードマップの作り方まで
日時 | 2021年7月30日(金) |
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場所 | 兵庫教育大学 加東キャンパス |
主催 | 国立大学法人 兵庫教育大学 |
共催 | 公益社団法人 土木学会関西支部 |
対象者 | 小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教員22名 |
講師 (敬称略) |
鍋島 康之(明石工業高等専学校教授) 清水 乙彦(国土地理院近畿地方測量部次長) |
【講習時間割】
09:30~09:35 | オリエンテーション |
09:35~10:35 | 講義1 地図の作り方 |
10:45~11:45 | 講義2 国土地理院HP地理院地図の使い方 |
12:40~13:40 | 演習 国土地理院HP地理院地図の操作 |
13:45~15:05 | 講義3 地図の使い方 |
15:15~16:15 | 実習 立体地図作成、歩測、実体視 |
16:30~17:10 | 試験 |
17:10~17:15 | 事後アンケート |
【講義・演習・実習】
2017年度から兵庫教育大学との共催で「地図」についての教員免許状更新講習を実施しています。講習の内容は社会の授業で馴染み深い「地図」の作り方から使い方です。
午前中は国土地理院 清水様に地図の基本的な内容について講義をしてもらいました。普段、学校の授業で使用している地図がどの様にして作られているのかについて、説明をしてもらいました。地図を作成する際にはいくつかの約束事があり、方位の表し方、緯度・経度、縮尺や地図記号について講義を受けました。また、最新の技術を用いた地図の作製法についても説明があり、衛星などを使った地図の作成方法に受講生は驚いていました。今年度は受講生が22名であったため、インターネットを使った講習もスムーズに実施でき、国土地理院のホームページに掲載されている「地理院WEB地図」の概要や使用法について講義を受け、その後、WEB地図を実際にパソコンで操作し、WEB地図を使ったハザードマップの利用法について演習を行いました。その後、明石工業高等専門学校 鍋島先生は二次元の地図から、いかに三次元の地形をイメージするか、そのための教材として立体地図や実体視について説明がありました。また、「一般地図」と「主題図」の違いについて説明を受け、主題図のなかでも学校に関係のある地域の「防災マップ」づくりについて明石工業高等専門学校 鍋島先生から作成事例をもとに講義を受けました。
実習では、講義で紹介したプラスチックのフタを重ねた富士山の立体地図を作成しました。他にも2つの画像を使って地形を立体的に見る実体視の訓練や、歩測で距離を測定しました。どの実習内容も実際の授業でそのまま使用可能な内容を受講生に体験してもらいました。色々な授業で使ってもらいたいと思います。
最後に、本日の講習内容に関する試験に解答し、事後アンケートを実施した後、解散しました。
【講座の様子】
【アンケート結果】
知っておきたい!防災・減災 -台風・高潮,地震・津波,地球温暖化-
日時 | 2021年8月10日(火) |
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場所 | 津波・高潮ステーション(大阪市西区) |
主催 | 国立大学法人 兵庫教育大学 |
共催 | 公益社団法人 土木学会関西支部 |
対象者 | 小学校、中学校、高等学校の教員19名 |
講師 (敬称略) |
安田 誠宏(関西大学環境都市工学部准教授) 高野 保英(近畿大学理工学部准教授) 辻内 健(大阪府西大阪治水事務所防災対策課) 高垣 正治(大阪管区気象台防災調査課) |
【講習時間割】
09:30~09:35 | オリエンテーション |
09:35~10:20 | 講義1 台風・高潮 |
10:30~12:00 | 講義2・実験実習 気象庁が進める防災教育,実験機材の紹介と体験 |
13:00~13:45 | 講義3 地震・津波 |
13:55~15:25 | 講義4・見学実習 高潮と津波の脅威、「津波・高潮ステーション」見学 |
15:40~16:25 | 講義5 地球温暖化 |
16:40~17:25 | 試験 |
17:25~17:30 | 事後アンケート |
【講義・実習】
兵庫教育大学との共催で教員免許状更新講習を、大阪府の施設である「津波・高潮ステーション」で、実施しました。テーマは「知っておきたい!防災・減災-台風・高潮、地震・津波、地球温暖化-」でした。この講習は、東日本大震災以降防災教育の必要性が高まっていることを踏まえて、教育現場の最前線におられる学校の先生方が、台風・高潮・地震・津波など災害を引き起こす自然現象の基礎知識を学ぶとともに、「津波・高潮ステーション」の見学を通じて、津波・高潮防災に関する基本的な理解を深めることを目的としています。本年はコロナ禍での実施であることを踏まえてコロナ感染対策に十分留意し、三密対策も考慮して、参加者19名で実施しました。
午前中は、関西大学の安田先生による日本における自然災害の概要、台風・高潮の発生メカニズムやその対策について講義を実施しました。その後、大阪管区気象台防災調査課調査官の高垣様から、気象庁の役割、防災気象情報および気象庁が実施している防災教育についての説明がありました。この講義は、学校教育現場での防災活動および防災教育に役立てていただくことを目的としています。講義後、防災教育のための実験機材の紹介と体験の時間を設けました。液状化実験装置やペットボトル竜巻装置など手作り可能な実験装置から、津波発生の模型、雨量計など災害の発生メカニズムの理解に役立つ装置や気象要素の計測に利用される機器など、様々な機器や装置が展示され、気象庁の方々からの説明後、実際に操作を体験していただきました。
午後は、安田先生による地震・津波の発生メカニズムや南海トラフ地震への備えについてなどの講義に続いて、大阪府西大阪治水事務所防災対策課の辻内様より、高潮・津波に関する基本的な知識と大阪府における対策について講義を実施しました。その後、参加者の皆様に「津波・高潮ステーション」を見学していただきました。「津波・高潮ステーション」では、展示物による津波・高潮対策の説明を受け、さらに「津波災害体験シアター(ダイナキューブ)」で津波の恐ろしさを体感できる映像を見ていただきました。
最後に、安田先生による地球規模の気候変動の現状と台風などの災害とのかかわりについての講義を実施しました。その後、本日の講習内容に関する認定試験を実施、事後アンケートを実施した後、解散しました。
【講座の様子】
【アンケート結果】
知っておきたい!関西国際空港の歴史と技術 ~世界大交流時代を支える海上空港の役割~
日時 | 2021年8月16日(月) |
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場所 | 関西国際空港 |
主催 | 国立大学法人 兵庫教育大学 |
共催 | 公益社団法人 土木学会関西支部 |
対象者 | 小学校、中学校、高等学校、特別支援学校の教員20名 |
講師 (敬称略) |
猪井 博登(富山大学都市デザイン学部准教授) 遠藤 徹(大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻准教授) 柳原 崇男(近畿大学理工学部准教授) 中谷 行男(関西エアポート株式会社) 瀬口 均(関西エアポート株式会社) |
【講習時間割】
09:30~09:35 | オリエンテーション |
09:35~10:25 | 講義1 航空とは?、空港とは?、関西国際空港の原点 |
10:25~10:55 | 実験 空港の立地計画・環境アセスメントの理解 |
11:05~11:45 | 講義2 関西国際空港の建設技術と環境配慮 |
12:35~13:35 | 講義3 関西国際空港が果たす役割と最近の取り組み |
13:35~14:05 | 講義4 関西国際空港の災害対策(ハード面)について |
14:20~16:20 | 体験実習 空港の施設を理解する、関西国際空港見学 |
16:30~17:30 | 試験 |
17:00~17:05 | 事後アンケート |
【オリエンテーション】
富山大学 猪井先生より、本講習の担当者について紹介を行った後、「土木学会とは」について説明を行っていただきました。
【講義と実験】
講義1では、富山大学 猪井先生から航空、空港、関西国際空港の立地に関する講義を実施していただきました。まず、航空の実態や空港の有する諸機能について説明されました。また、ビデオを用いて関西国際空港建設までの経緯と立地選択の際に注意した事項について講義を行われました。この講義内容は、「実験 空港の立地計画・環境アセスメントの理解」につながる内容を意識してお話しされました。
実験では、関西国際空港の立地計画に関するデスクワークを実施しました。このデスクワークでは、地図を用いて、騒音の問題、交通アクセスの問題、気象条件、地理条件等を踏まえて、国際空港を近畿圏に建設するための最適な場所についてそれぞれ検討しました。
講義2では、大阪市立大学 遠藤先生から関西国際空港の建設技術と環境配慮について講義を実施していただきました。沈下が生じるメカニズムや沈下を促進させるための技術などを講義されました。さらに関西国際空港での取組が元となった環境アセスメントについて説明されました。
講義3では、 関西エアポート株式会社 中谷様から関西国際空港が果たす役割と最近の取組みついて講義を実施していただきました。講義では、関西国際空港の旅客や貨物の現在の状況や地域の貢献についてお話しをされました。また、インバウンド旅行客増大への対策や現在進められているT1 リノベーション工事の概要について説明がありました。
講義4では、関西エアポート株式会社 瀬口様から、2018年に近畿圏に甚大な被害を及ぼした台風21号による高潮被害と関西国際空港での対策について講義がありました。まず、被害状況として、電力等の喪失や連絡橋の被災について、早期に復旧したことについて説明がありました。その後、護岸部の越波対策、東側護岸嵩上げに伴うA滑走路の嵩上げ、電気設備等の地上化などの対策が説明されました。
【施設見学実習】
施設見学では、受講生を2班に分け見学を行いました。講義で取り上げた建物の不等沈下の影響を和らげるジャッキアップシステム、高潮対策ゲート、高潮対策の状況、滑走路などを見学してもらいました。また、空港内にある様々な施設について、見学中のバス車内で関西エアポート株式会社の方より説明いただきました。
【履修認定試験、事後アンケート】
講義、施設見学実習後に、講習内容に関する履修認定試験に解答し、事後アンケートを実施した後、解散としました。