カテゴリー: 関西支部技術賞

  • 平成18年度 土木学会関西支部技術賞

    掲載の記事・写真・図表などの無断転載・使用を禁止します。
    著作権は公益社団法人土木学会関西支部および作者に帰属します。

    技術賞

    【対象業績】
    JR山陽本線姫路駅付近における連続立体交差事業
    JR姫路駅付近高架化(JR山陽本線、山陽新幹線、山陽電鉄線の交差箇所)
    JR姫路駅付近高架化(JR山陽本線、山陽新幹線、山陽電鉄線の交差箇所)
    【受賞者】
    兵庫県
    姫路市
    西日本旅客鉄道株式会社
    山陽電気鉄道株式会社
    【受賞内容】

     JR山陽本線等姫路駅付近連続立体交差事業は、JR山陽本線約4.3㎞、姫新線約1.3㎞、播但線約1.0㎞を高架化し、踏切7箇所を除却するもので、平成18年3月26日に大規模切換工事を行い、JR山陽本線姫路駅付近の高架化が完成した。
     事前に駅東側高架を一部開通させ、4箇所の踏切除却を行うことにより、交通渋滞の早期緩和を図るとともに、主要な幹線道路がJRと交差する「大将軍橋」、「朝日橋」の2つの跨線橋については仮桁を架設し、工事期間中の南北交通交差路の確保に努めた。
     切換工事は、JR山陽本線、山陽新幹線、山陽電鉄線が相互に交差している複雑な箇所での切換を含め、9箇所同時施工となる前例のない大規模工事となるため、4日間にわたる列車運行時刻の変更や運休など、交通影響を最小とする切換計画を策定するとともに、工事に伴うリスク管理を徹底し、事前に関係機関と入念な調整を行うことにより、無事故で工事を完遂することができた。
     また、関連道路事業や周辺の土地区画整理事業と併せて実施することで、都市交通の円滑化、播磨地域の市街地の一体化を図り、都市基盤整備の促進に寄与した。
     本業績は、大規模かつ複雑な切換工事を、多くの事業主体とともに綿密なリスク管理のもとで安全に実施したこと、交差する幹線道路の通行を確保しつつ、可能な箇所については早期に踏切除却を行い、交通の円滑化など事業効果を発現したこと、まちづくりや地域の発展への貢献が期待できることなどを評価された。


    【対象業績】
    内在塩分を有するRC中空床版橋のリニューアル -阪和自動車道 松島高架橋-
    松島高架橋の劣化損傷状況と劣化部コンクリートの撤去、リニューアルの完了
    松島高架橋の劣化損傷状況と劣化部コンクリートの撤去、リニューアルの完了
    【受賞者】
    西日本高速道路株式会社関西支社
    株式会社富士技建
    株式会社フジエンジニアリング
    【受賞内容】

     建設当初の内在塩分とひび割れから浸入した雨水の影響で、内部鉄筋が腐食し耐荷力が低下したRC中空床版橋に対し、主鉄筋断面部を含む劣化部コンクリートをウォータージェットで全面撤去した後、その上面に新たな鉄筋コンクリート断面を増設して剛性を向上させるスラブ増厚補強工法を採用、実施した。
     劣化コンクリートの撤去では、既設部コンクリートのマイクロクラック防止のため、ウォータージェット工法を用いるとともに、支間中央部のジャッキアップと全面支保工の併用工法により、鉄筋の応力解放による再配分に対処した。また、はつり後の既設コンクリート面に絶縁材を塗布して新旧コンクリート間の電気抵抗を高める、新たな鉄筋のマクロセル腐食防止工法を開発した。さらに、通行止めを避けるため、3段階の車線切換えによる車線規制下での施行とし、3.5ヶ月間の最小限の交通規制でリニューアル工事を完了した。
     本業績は、近年、全国的に問題となっている、塩害、中性化、アルカリ骨材反応等で劣化したコンクリート橋のリニューアル工法として、既存施設の有効活用により環境保全に寄与したこと、通行規制の最小化を可能とするなど社会的な貢献を図ったこと、新マクロセル腐食防止工法の開発によりライフサイクルコストの低減を図ったこと、汎用性の高い工法であることなどを評価された。


    【対象業績】
    わかりやすい河川防災情報の提供
    河川毎にイラスト画像と色合いで危険の程度を“わかりやすく”提供
    河川毎にイラスト画像と色合いで危険の程度を“わかりやすく”提供
    【受賞者】
    大阪府都市整備部河川室
    【受賞内容】

     近年の全国的な集中豪雨による中小河川での水害では、増水時の河川の水位情報をはじめ、河川の危険の程度を”いかに住民にわかりやすく伝えるか”が課題となった。大阪府河川室では、これまで水位、雨量、潮位情報についてはホームページにより一覧表形式の数値情報で提供してきたが、よりわかりやすいものとするため、大阪府が管理する河川のうち、特に洪水被害による影響が大きな38河川について、市町村毎、河川毎にイラストで画面を作成し、河川の色あいを通常時:青色、警戒時:黄色、危険時:赤色として、危険の程度をわかりやすく表示することとした。
     さらに、この情報をパソコンに不慣れな方でも手軽に入手できるように、民間ケーブルテレビ会社の協力を得て、自宅のテレビでもホームページのイラスト画面をそのまま放送することを可能とした。
     これが、増水時に住民の自主的な避難行動を起こすきっかけとなるとともに、普段からの防災情報に対する意識啓発を図り、洪水被害の『減災』に大きく寄与することが期待される。
     本業績は、一般市民にわかりやすく情報提供する、市民と一体となった防災システムとして価値があり、市民の安全・安心の確保が図られるなど地域への貢献が著しいこと、全国的な汎用性があること、今後のさらなる改善による発展性が期待できることなどを評価された。

    技術賞特別賞

    【対象業績】
    穿孔機械によるアスファルト舗装のリニューアル
    穿孔状況
    穿孔状況
    【受賞者】
    大阪府都市整備部
    福田道路株式会社
    【受賞内容】

     ポーラス舗装における経年的な目詰まりによる排水機能低下が全国的な課題となっている中、舗装体に多数の孔を開けることにより排水機能を回復させることを着想し、穿孔機械及び工法の開発を行ったものである。 目詰まりの現象は、既設道路の排水性舗装断面の舗装厚5㎝のうち上部1~2㎝部分において顕著であり、下部の空隙は確保されていることが確認されている。本技術は、既存のアスファルト舗装をロードヒーターにより軟化させ、剣山のような針のついた盤を油圧などの力でアルファルト舗装に押し込むことにより、舗装体に多数の孔を開け、雨水を浸透させる舗装体に改善させるものである。これにより、排水あるいは透水機能が低下した舗装体の機能を回復させることが可能となり、府管理道路5箇所における試験施工においても機能回復効果が確認された。
     本技術は、まだ解決すべき課題は残っているものの、確立されれば透水機能の回復による道路環境の改善に寄与するものと期待される。 本業績は、技術的に開発途上の側面はあるものの、排水性舗装の欠点である目詰まり解消方策として考案された画期的な工法であることなど、その独創性と今後の課題解決による発展への期待も含めて評価された。


    【対象業績】
    チャート式耐震診断システムの開発 ~海岸堤防の耐震性を早くかつ安く診断~
    チャート式耐震診断システムの活用イメージ
    チャート式耐震診断システムの活用イメージ
    【受賞者】
    一井 康二
    井合 進
    菅野 高弘
    国土交通省近畿地方整備局 神戸港湾空港技術調査事務所
    財団法人沿岸技術研究センター
    【受賞内容】

     大規模な津波の来襲を伴う東南海・南海地震の発生が切迫し耐震性の評価が急務となっているが、シミュレーションに多くの費用・時間を必要とすることなどから、全国の防潮堤等海岸保全施設の約6割が耐震性調査未実施の状況にある。
     こうした中、海岸保全施設の施設形状と地盤の強度等の情報から、地震時の施設の残留変位を簡便に評価するために、模型実験、FLIP解析(二次元有効応力解析)を用いたパラメトリックスタディ等の結果を取りまとめることにより、沿岸構造物のチャート式耐震診断システムを開発した。
     当システムは、従来の簡易な耐震評価・点検手法のように施設の安定を定性的に確認するのではなく、施設の変形を定量的に求めることができるものである。また、長周期で繰返し回数が多い海溝型地震動やレベル2地震動に対応していることや、全国の港湾施設(重力式岸壁)、海岸保全施設(直立型、傾斜型)に適用できることも特徴である。今回当システムを開発したことにより、長大な延長の海岸保全施設の耐震性調査を効率的且つ経済的に実施できる。
     本業績は、これまで多くの費用と時間を必要としていた耐震診断を、本システムの開発により効率的・短期的に実施することができ、多方面での活用が期待されるなど、その汎用性・発展性を評価された。


    【対象業績】
    防波堤のリユース ~神戸港中央航路拡幅工事~
    防波堤のリユース施工状況
    防波堤のリユース施工状況
    【受賞者】
    国土交通省近畿地方整備局 神戸港湾事務所
    【受賞内容】

     神戸港中央航路拡幅事業は、港湾物流の効率化及び物流コストの縮減を目的として、神戸港の主航路である中央航路の通航をスムーズにするため、航路の拡幅を図るとともに、港内の静穏度を確保するための防波堤を建設するものであり、この航路拡幅にあたり第7防波堤の撤去に伴って発生するケーソン等を新たに建設中の第8南防波堤に活用した。
     従来の撤去ケーソンの活用事例としては、強度が求められない場所への転用の事例が多いが、今回のように強度が求められる第一線の防波堤に本格的活用した事例は、全国的にも初めてである。
     このため、実施に先立ち、既設ケーソンの状態を把握するための種々の調査が行われるとともに、学識経験者、関係機関等による検討会において、構造や施工法について各種検討が行われ、これらを受け、適切な工法により防波堤再利用の実現が可能となった。
     本業績は、事業として港湾構造物の現地発生品をリユースするという新たな試みを行ったこと、構造や施工法について適切な評価と工夫で転用を可能にしたこと、廃棄物の削減により環境負荷の低減に寄与したこと、トータル整備コストの縮減を実現したことなど、時代のニーズに沿った使命感の下で努力を行ったことを評価された。


  • 2026年度 土木学会関西支部 技術賞候補発表会

    『2026年度 土木学会関西支部 技術賞候補発表会』の詳細が確定しましたら、こちらのページに掲載します。

  • 平成17年度 土木学会関西支部技術賞

    掲載の記事・写真・図表などの無断転載・使用を禁止します。
    著作権は公益社団法人土木学会関西支部および作者に帰属します。

    技術賞

    【対象業績】
    「ASR橋脚の維持管理マニュアル」の策定
    ASRによる橋脚のひび割れと補修完了状況
    ASRによる橋脚のひび割れと補修完了状況
    【受賞者】
    阪神高速道路株式会社
    【受賞内容】

     アルカリ骨材反応(Alkali-Silica Reaction= ASR)によるコンクリート構造物の劣化は、1980年代に日本各地で発見され、コンクリートクライシスとして大きな社会問題となった。阪神高速では、1982年に ASRによる橋脚の劣化を発見し、委員会などで検討を行った。その成果に基づいて維持管理指針やコンクリート表面保護工便覧を制定し、反応抑制対策などを行い、適切な維持管理を実施してきた。ところが1999年、橋脚梁部において鉄筋破断が発見されたため、緊急かつ新たな課題に対応すべく検討委員会を設置し、2005年、全国に先駆けて鉄筋破断に対応した「ASR橋脚の維持管理マニュアル」を制定した。 この維持管理マニュアルの特徴は、 1.鉄筋損傷の調査ポイントの明示 2.外観劣化度によるグレーディング管理の採用 3.性能照査、補修・補強の考え方の明示 4.追跡点検・モニタリング方法の明示 などが挙げられる。
     今後、構造物の高齢化が進み維持管理の重要性が一層高まる中で、この維持管理マニュアルは、全国のASR劣化構造物の維持管理において活用が期待される。
     本業績は、過去の技術的知見、デ-タおよび要素実験を基に作成され内容が充実していること、組織が一丸となり高い使命感を持ち先駆的、継続的に取組んだこと、実務者に分かりやすい形で纏められおり、今後のASR診断技術の先導的な役割を果たすと期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    切り替えて次世代につなぐ
    -神戸新交通ポートアイランド線延伸事業-

    三宮と神戸空港を結ぶ神戸新交通ポートアイランド線延伸事業
    三宮と神戸空港を結ぶ神戸新交通ポートアイランド線延伸事業
    【受賞者】
    神戸市企画調整局
    神戸新交通株式会社
    【受賞内容】

     神戸新交通ポートアイランド線は三宮とポートアイランドを結ぶ、昭和56年2月に我が国で最初に営業を開始した新交通システムである。神戸市では、その後もポートアイランド第2期や神戸空港の建設などの都市基盤の整備を進めており、本事業は、それらの事業と連携し、新たな交通需要に対応するとともに、既存路線の利便性を高めるため実施された。
     事業の計画、建設にあたっては、既存路線を活用することにより建設コストを大幅に削減し、既成市街地への環境・景観に配慮しつつ、神戸空港の建設やポートアイランド第2期の医療産業都市の形成などの周辺関連事業と連携しながら事業を進めた。また、無人自動運転の新交通システムの営業線としては史上初となる線路切り替え作業において、安全で確実な工事の実施、綿密な工程管理とリスク管理により予定時刻に無事営業を再開した。さらに、複合型新形式橋梁であるCFTガーダー橋の採用、空港連絡橋における道路橋との一体架設や大伸縮装置の考案など、様々な創意工夫を凝らして問題点を解決した。
     本事業は、このように新しい実績と貴重なデータの蓄積により、都市土木技術の発展に大きく寄与するとともに、利便性の高い都心型空港の形成と海上都市の発展に大きく貢献していくと考えられる。
     本業績は、鋼床板CFTガーダー橋の採用により景観性、経済性に優れた構造を確保したこと、無人自動運転の新交通システムの営業線においては史上初となる線路切り替えを綿密な施工計画の立案と安全な工事の実施により無事に行ったこと、様々な工夫を行うことで既存路線の活用を図り、効率的で経済的な事業を推進したことなどが評価された。


    【対象業績】
    近代土木遺産の再生
    ~日本最古の重力式コンクリートダム 布引五本松堰堤の堤体補強~

    布引五本松堰堤の堤体補強を中心としたリニューアル工事
    布引五本松堰堤の堤体補強を中心としたリニューアル工事
    【受賞者】
    神戸市水道局
    【受賞内容】

     布引五本松堰堤は、明治33年に建設された日本で最古の重力式粗石コンクリートダムである。本事業は、建設100年という節目を機に、堤体を新たな耐震基準に適合させることを主目的として、本格的なリニューアル工事を行ったものである。維持管理時代の先駆として、先人が様々な工夫を施して建造された土木遺産を、「当時の技術や景観を生かしつつ、現代の技術を加え、次世代に継承する」といった観点で設計・施工に創意工夫を加えて実施した。
     まず、建設当時の図面・書類から設計諸元や使用材料を明らかにし、経済性と要求性能の両立に配慮した。更なる100年も堰堤を供用するため、補強コンクリートを堤体上流面に増打ちを行い、堤体上流端に発生する引張力を解消し、耐震性能の向上を図ると共に、その優れた景観を継承するため、石張りによる表面処理を行った。また、管理橋の補強に際しては、建設当時の部材を出来るだけ残し、既設類似部材で補強するなど、現況と違和感のないよう配慮した。
     ダム周辺は自然環境に恵まれ、冬場はオシドリの飛来地として知られている。野鳥が安心して生息できるよう、潜堤築堤や堆積土砂の撤去にあたり、水面の広がりが確保出来るよう配慮した。また、より良い水辺環境の創出として、野鳥観察所等を整備した。
     本業績は、土木遺産の次世代への継承を「技術者としての思想」「市民との絆」の視点で捉え実現したこと、社会環境、周辺自然環境に配慮し近代土木遺産の現況を最大限保存した上で、堤体の耐震性の向上と貯水容量の回復を図ったこと、古い構造物の健全性を正確に診断した上で、新しい社会資本として再生した技術は、今後の同種事業への展開が期待できることなどが評価された。


    【対象業績】
    重交通交差部における老朽化橋梁の横梁移植プロジェクト
    -名神高速道路 下植野高架橋-

    下植野高架橋の横梁「移植」と鈑桁の「再利用」による連続立体ラーメン橋の完成
    下植野高架橋の横梁「移植」と鈑桁の「再利用」による連続立体ラーメン橋の完成
    【受賞者】
    西日本高速道路株式会社関西支社
    横河工事株式会社
    株式会社日本構造橋梁研究所
    株式会社フジエンジニアリング
    【受賞内容】

     昭和38年に供用を開始した名神高速道路の下植野高架橋は国道171号線を斜めに跨いで架設されており、鋼床版構造の横梁で鋼単純合成鈑桁を支持した橋梁であった。本橋は約40年間、重交通による載荷に耐えてきたが、横梁の構造上の問題から局部座屈及び疲労亀裂が発生するなど、危険な状況が進行していた。そこで、損傷対策と共に、車両大型化対応と耐震性能を確保するためのリニューアル工事を実施した。
     リニューアル工事では、構造上の問題を有する横梁とRC橋脚は撤去し、「移植」した新設横梁と再構築した鋼製橋脚を剛結した。また損傷の軽微な鈑桁は再利用し、横梁と剛結して連続立体ラーメン構造とした。これにより、耐力の増強、耐震性能の向上、及び沿道環境の改善を図った。
     また、鈑桁を高速道路上空に設けた架設桁で吊る「ガーダー・ハンガー・エレクション工法」により横梁を移植し、名神高速道路及び国道171号線の重交通への影響を最小限にして工事を実施した。人間に例えると臓器移植手術に匹敵する本設計・施工法は、困難を伴う都市内高架橋のリニューアルの一方法であり、今後多方面で応用が期待される。
     本業績は、道路交通や沿道環境などの厳しい制約下で困難を克服したこと、既存構造物を可能な限り活用したこと、社会資本の更新時代を迎えつつある中で、今後応用が期待できることなどが評価された。


    【対象業績】
    密集した市街地での4本併設、急曲線シールドトンネルの施工
    -大阪市営地下鉄第8号線4工区シールド工事-

    シールドトンネル完成パースと導入されるリニアモーター車両、シールドマシン、掘進完了状況
    シールドトンネル完成パースと導入されるリニアモーター車両、シールドマシン、掘進完了状況
    【受賞者】
    大阪市交通局
    大林・戸田・錢高・森本・奥村組土木特定建設工事共同企業体
    【受賞内容】

     大阪市交通局により整備が進められている地下鉄第8号線は、大阪市東部に位置する井高野から今里までを結ぶ建設延長12.1km、駅数11の路線で、平成18年12月の開業によって市域東部における公共交通の利便性は飛躍的に向上すると期待されている。このうち、4工区は8号線全路線の中でほぼ中央に位置し、本線シールド2本と出入庫線シールド2本、さらには開削工事2箇所を擁する大規模工事である。
     大阪内環状線直下では、これら4本のシールドトンネルが併設施工を行い、続いて大阪内環状線から国道163号線にかけて、本線シールド及び出入庫線シールドともに急曲線施工を行った。わが国の地下鉄工事において、4本併設と急曲線の連続施工はほとんど例がなく、施工にあたっては地盤変状の防止、先行トンネルを含む既設構造物への影響の抑制、併設区間と急曲線区間の連続掘進の円滑化を最重要課題とした。これらの課題に対して、併設部や急曲線部での適切な計測技術の採用と管理、施工条件下での裏込注入材の強度発現状況の把握、砂礫層における適正な泥水配合の把握等に努めた結果、課題を克服して竣工することができた。
     今後、市街地では地下構造物の輻輳化、地上構造物の密集化がより進むと考えられており、本プロジェクトは、そのような条件下で行われるシールド施工に大いに参考になると期待される。
     本業績は、市街地の軟弱地盤という厳しい環境の下、数々の工夫により周辺環境への影響を最小限に抑えながら、急曲線シールドを4本併設施工したこと、地下空間における有効活用の先例として活用が期待できることなどが評価された。

    技術賞奨励賞

    【対象業績】
    IT時代の大動脈”通信とう道”を守る
    ~既設シールドトンネルの新しい補強技術と変状監視技術~

    通信とう道の補強と変状監視
    通信とう道の補強と変状監視
    【受賞者】
    エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社関西支店
    大阪市交通局
    財団法人地域 地盤 環境 研究所
    日本コムシス株式会社関西支店
    JFEエンジニアリング株式会社
    アイレック技建株式会社西日本営業本部
    【受賞内容】

     大阪東部を南北に縦断するとう道ルートの近傍に大阪市営地下鉄第8号線工事が計画され、その内、約2.5kmが近接施工区間となった。一部区間に、とう道との離隔が約1mの超近接施工箇所があり補強が必要となった。そこで、とう道に収容している通信ケーブルを撤去することなく補強が可能で、トンネル軸方向の変形追従機能を有する新しい補強工法を開発し採用した。
     また、約2.5kmにおよぶ近接監視区間と約5年間の長期計測を実施するにあたり、光ファイバをセンサとした監視システムを構築し、とう道の変状監視を実施した。光ファイバセンサの特性を活用した計測システムにより、従来の計測手法ではカバーできなかった連続的な長距離間のデータが取得され、かつ長期的なとう道構造物の監視が可能となった。
     今回のとう道補強及びとう道変状監視システムは、地下鉄工事の円滑な工事進捗と施工の安全に寄与したものと考えられる。また、これらの技術は、今後、近接施工に限らず、トンネルの維持管理に有効活用されるものと期待される。
     本業績は、情報化施工及び対策工法の一つとして効果的な技術を開発したこと、今後の地下空間における近接工事の先例として活用が期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    「震災10年いま新生のまち六甲道駅南地区」
    ~住民との協働による防災拠点整備~

    六甲道まちびらき
    六甲道まちびらき
    【受賞者】
    神戸市
    【受賞内容】

     神戸市は、阪神淡路大震災により壊滅的な被害を受けたJR六甲駅南側地区において、副都心として、また防災拠点としての復興を早期に図るため、六甲駅南地区震災復興第二種市街地再開発事業を計画した。 震災から2ヶ月後に行われた施行区域と主な都市基盤のみの「第1段階の都市計画決定」は、避難者への周知などが課題であった。しかし、復興方針を早期に明らかにすることにより、被災者のより早い生活再建に貢献できた。
     第2段階では、住民参加手法として「まちづくり協議会・まちづくり提案」方式を採用した。地区中央の防災公園(六甲道南公園)整備計画について、地元協議会のまちづくり提案を受け入れ、住民の意見を反映するため、ワークショップにより計画内容と管理方法について協議を重ね決定した。また、公園南側の広場部分では、国際記念コンペにより選ばれた案を基に整備した。平成17年9月、主要公共施設の整備が完了し、住民との協働により地域をあげてのまちびらき行事が行われた。
     この10年の「協働のまちづくり」による防災拠点整備の取り組みは、今後、不幸にして、何らかの災害が都市に発生した場合、復興計画への参考になるものと期待される。
     本業績は、震災後の新しいまちづくりとして、多くの困難を克服しながら、合意形成を意識した都市計画手法により、早期の復興を成し得たこと、行政と住民が一体となり地域協働のまちづくりを行ったことなどが評価された。


  • 平成16年度 土木学会関西支部技術賞

    掲載の記事・写真・図表などの無断転載・使用を禁止します。
    著作権は公益社団法人土木学会関西支部および作者に帰属します。

    技術賞

    【対象業績】
    下弦ケーブルを用いた有ヒンジラーメン橋の補強設計と施工
    -喜連瓜破高架橋補強工事-

    喜連瓜破高架橋補強工事完成状況
    喜連瓜破高架橋補強工事完成状況
    【受賞者】
    阪神高速道路公団大阪管理部
    株式会社富士ピー・エス関西支店
    【受賞内容】

     阪神高速道路松原線喜連瓜破高架橋は1979年に建設された有ヒンジラーメン橋であり、ヒンジ部での顕著な垂下がりが確認され、対策を必要としていた。2002年時点の経過観測では、桁としては計画の高さから240mm、舗装のオーバーレイを行っていた路面でも約120mmの差を生じており、年変化量も5mm/年程度の進行を示していた。
     このヒンジ部の垂下がり抑止、たわみ回復を目的として、主桁下面に鋼製のストラット部材を設け、外ケーブルを偏心配置させる補強構造を初めて採用した。設計・施工にあたっては桁下の交差点交通に影響を与えないよう配慮するとともに、補強効果の確認のために、補強前後の実橋静的載荷試験、補強後の経過観測など各種計測・試験を行った。
     本補強工事により、40mmのたわみ回復量を得ることができ、路面での差の約1/3を解消することができた。また2005年1月時点の計測では、垂下がりの進行は認められていないことから本補強工法の有効性が確認された。
     本業績は、地域に配慮して施工中の街路交通に与える影響を最小限に抑えたことや、調査・工法の実施・効果の確認等に総合的な対応をしていること、今後の大きな課題であるメンテナンス分野において、同様の問題を抱える橋梁の対策工法としての活用が期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削
    -京阪奈新線 東生駒トンネル、北大和トンネル-

    閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削-けいはんな線 東生駒トンネル、北大和トンネル-
    閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削-けいはんな線 東生駒トンネル、北大和トンネル-
    【受賞者】
    奈良生駒高速鉄道株式会社
    近畿日本鉄道株式会社奈良生駒高速鉄道新線工事事務所
    奥村・前田・五洋・不動特定建設工事共同企業体
    鹿島・飛島・東急・淺沼特定建設工事共同企業体
    大林・清水・戸田・村本特定建設工事共同企業体
    【受賞内容】

     けいはんな線(8.7km)は、奈良県北西部に位置し、開業後は大阪湾ベイエリアと関西文化学術研究都市とを結ぶ鉄道東西幹線軸形成の一翼を担う。路線の約6割がトンネルで、そのうち東生駒トンネル(延長3,625m)は、閑静な住宅地とゴルフ場直下(土被り60~70m)の岩盤地山、北大和トンネル(延長1,100m)は、閑静な住宅地直下(土被り7~26m)の未固結含水地山と、非常に厳しい条件の中で、安全性確保、環境保全を前提に経済性を追求してトンネル掘削を行った。
     施工に際しては、発破による騒音振動対策、盛土直下や断層湧水区間の地表面沈下対策が課題であったが、綿密な計測管理と計測結果を次の施工に反映して追加対策を実施し、徹底した情報化施工を行った。また地元とは、環境管理値、実測値等を積極的に情報開示し、現場見学会を開催することなどにより信頼関係を構築した。その結果、当初目標どおりの工期、工事費で工事を完成することが出来た。
     都市の高密度化、再構築に伴い今後も住宅地周辺でトンネル掘削を行う機会が増えるものと予想されるが、住宅地周辺で岩盤地山を発破方式、未固結含水地山を都市NATM工法により掘削した本事例は、大いに参考になるものと考えられる。
     本業績は、種々の厳しい条件下において、綿密な技術的対応、地域住民へのアカウンタビリティの積極的な実施、安全性の確保、住環境の保全、コストの削減等により今後の土木事業に何が必要であるかを明確に示したことや、鉄道の開業により地域の発展性を大きく創出することなどが評価された。


    【対象業績】
    震災復興事業に併せた神戸地区の鉄道整備とまちづくり
    震災復興のまちづくりにおける鉄道ネットワークの再構築と駅周辺整備の実施状況
    震災復興のまちづくりにおける鉄道ネットワークの再構築と駅周辺整備の実施状況
    【受賞者】
    神戸市
    西日本旅客鉄道株式会社
    【受賞内容】

     平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により甚大な被害を受けた神戸市は、新長田・鷹取地区および東部新都心(HAT神戸)地区において、復興のまちづくりと連携し、以下のような鉄道ネットワークの再構築や駅周辺整備を行ってきた。

    1. 震災復興土地区画整理事業に併せた鷹取工場移転に伴う工場検修機能の再配置と、近畿圏内での効率的な車両運用が可能となる網干電車区の総合車両所化
    2. 東部新都心整備事業等で移転が必要となったJR貨物神戸港駅の代替地として、工場移転により機能停止となる鷹取駅構内の低効率用地を活用したコンテナ輸送形態の改善
    3. 貨物機能移転事業に併せた鷹取駅構内南北自由通路整備による、鉄道利用者への利便性向上とまちづくりにおける面的整備への貢献
    4. 震災復興土地区画整理事業における鉄道・工場用地を活かした防災拠点機能を有するまちづくり

     本事業は、震災復興にあたり、単なる鉄道施設の再整備にとどまらず、都市部における災害に強いまちづくりと鉄道整備とを一体化させて実施したという点では、過去事例の稀有な先駆的業績であり、地域への貢献度は極めて高いものであると考えられる。
     本業績は、震災というマイナスのインパクトを逆に利用し、都市の防災性向上という大目標を掲げ、官民が一体となって鉄道施設の効率的配置とまちづくりを密接に関連させつつ、震災地域の復興に大きく貢献するプロジェクトとして短期間に事業をまとめあげた点が評価された。


    【対象業績】
    日本初の一次覆工のみによる立坑の築造
    -箕面有料道路山岳トンネル築造工事(北工区)

    箕面トンネル換気立坑(施工中と完成後)
    箕面トンネル換気立坑(施工中と完成後)
    【受賞者】
    大阪府道路公社
    鹿島・大成・東亜・三井住友・青木あすなろ共同企業体
    【受賞内容】

     箕面トンネルは国道423号バイパスの中心となる延長5.6kmの山岳トンネルで、新御堂筋北部の北摂山地を貫き、北大阪地域と大阪都心部を結ぶ交通の主要路線となる有料道路トンネルである。構成としては、本坑、避難坑の他、地下換気所および換気立坑などを併設している。
     換気立坑は、331mにも達する大深度であるが、合理的な設計のもとに、従来の2層構造の覆工コンクリートに対して、配合および施工法の両面から耐久性を高めて1層のみの構造にして全体の覆工厚さを半減させた。つまり、覆工コンクリートの配合を高強度および高じん性に改良するとともに、密実にコンクリートを打設するため、従来の流込み打設に替えて、ポンプ圧送方式による打設を確立した。
     逆巻きコンクリートならではの打設の困難さや、湧水の集水方法などに苦労したが、独自の施工方法を確立し、問題点を克服した。
     換気立坑にシングルシェルを実現させたのは箕面トンネルが初めてであり、先駆的な取り組みによって3.5ヵ月の工期短縮と17%の工事費の縮減を達成することが出来た。
     本業績は、コンクリートの品質確保や打設方法等で様々な技術的な工夫を行うことにより、山岳トンネルにおいて通常施工される二次覆工を省略し、工期の短縮とコストの縮減を達成した先駆性やその判断、今後の高品質・高耐久コンクリート構造物への発展性が期待できることなどが評価された。


    【対象業績】
    阪南港 阪南2区 人工干潟の造成
    官民連携により早期造成を実現した阪南2区人工干潟
    官民連携により早期造成を実現した阪南2区人工干潟
    【受賞者】
    大阪府港湾局
    関西電力株式会社
    東洋建設株式会社
    【受賞内容】

     阪南2区人工干潟は、生物の生息・生育空間の創出や水質浄化機能の向上を目的として、大阪府岸和田市沖合に整備した潮間帯面積1.6ha(整備面積5.4ha)の人工干潟である。
     本事業は、民間企業と地方自治体が「大阪湾の自然再生」という目的に向かって連携し、民間の建設工事から発生する浚渫土砂を干潟造成に有効利用することにより、環境負荷低減と環境再生、干潟の早期造成、コストの削減を実現した事例である。
     今回の干潟造成は、高含水比で軟弱な浚渫粘土を用いた、8~11mという大水深での干潟造成となったが、室内実験と現地試験施工による検討を重ね、中仕切堤の築造と、大規模海洋工事では初めてとなる生分解性シートの採用により、潮間帯の確保や覆砂の浚渫粘土中への潜り込みの防止といった課題を克服し、大阪湾の干潟面積を大幅に増大させ、大阪湾再生に貢献するものである。
     今後も、航路浚渫等により浚渫土砂は継続的に発生すると予想され、本工事の成果は、軟弱な浚渫粘土を有効活用した環境再生の実現に大きく貢献するものと考えられる。
     本業績は、浚渫土砂処分と干潟の再生を官民の連携によりリンクさせ、環境負荷低減と環境再生、さらにはコストの縮減を同時に達成した先駆的事例であることや、環境に配慮した事例として、今後の同種事業への発展が期待できることなどが評価された。

    技術賞奨励賞

    【対象業績】
    構造物の鉛直、水平変位および傾斜角計測システムの開発と運用
    長区間多測点鉛直水平変位設置状況
    長区間多測点鉛直水平変位設置状況
    【受賞者】
    中央復建コンサルタンツ株式会社
    綜合計測株式会社
    大阪大学大学院教授 松井繁之
    【受賞内容】

     傾斜・上下不同変位および水平変位は構造物に悪影響を与える代表的な変状要素であり、正確な量的確認が大切である。特に、都市再生および都市機能改善を目的として、地下空間の高度利用が活発であり、既設構造物の直下あるいは直近工事も増加しており、既設構造物の変位管理計測は重要な土木技術分野となっている。一方、既設構造物は、経年劣化を伴い、変位・変状状態の管理が重要な要素となっている。その変位管理値は、1/10mmが要求精度であるが、従来型の計測器では精度の確保が困難である。特に水を利用した従来型の水管式沈下計は温度による影響が大きく、基本的な見直しが必要であるとされてきた。その理由は、温度変化による計測機器の見かけ上の変化を排除しにくいことである。そのため、新たなセンサーとして渦電流センサーに着目し、さらに計器の構造を根本から見直した新しい変位計測機器を開発した。本器は、非接触の状態で変位変化を高精度に測定することができ、また水中利用も可能である。
     今回、開発された鉛直、水平および傾斜測定器は、大気温度変化の影響を殆ど受けることがなく、従来型の計器で必要とされていた温度補正用の事前計測が不要となる。
    本業績は、「鉛直変位、水平変位、傾斜角」のト-タル計測システムとして開発され、より高精度な計測を実現し信頼性が高まったことや、現場の省力化の進展が大きく期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    南阪奈道路の建設
    「南阪奈道路」(美原ジャンクション)
    「南阪奈道路」(美原ジャンクション)
    【受賞者】
    国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所
    大阪府富田林土木事務所松原建設事業所
    奈良県高田土木事務所
    日本道路公団関西支社奈良工事事務所
    大阪府道路公社
    【受賞内容】

     南阪奈道路は、日本最古の官道「竹内街道」とほぼ並行し、延長16.9kmの大阪と奈良を結ぶ自動車専用道路であり、大阪府南河内郡美原町から奈良県北葛城郡新庄町に至る「平成の竹内街道」として、国土交通省・大阪府・奈良県・日本道路公団・大阪府道路公社の5者が協力して整備を行い、平成16年3月28日に全線一斉の供用開始を行った。
     美原JCTでは、阪和自動車道上空での電磁波対策を行いながらの超大型クレーンによる大ブロック桁架設、大黒トンネルでは文化財への考慮から低土被り工法での施工とした。また、国定公園内を通過することなどから、自然環境や周辺環境に配慮したデザイン等の採用や、竹内街道の歴史性を考慮した色彩の採用等、種々の取り組みを行った。
     南阪奈道路の開通により、大阪・奈良間の現道や、渋滞が恒常化しつつあった西名阪自動車道の渋滞緩和、および近畿圏中心部や関西国際空港と奈良県中南和地域間の大幅な時間短縮など、アクセスの向上や広域的ネットワークの形成により、地域の連携強化および活性化が期待されている。
     本業績は、5事業者の連携により長期にわたって様々な技術的課題に対応しつつ、景観への配慮、自然環境への調和を図りながら、地域の発展に大きく貢献する高速道路を完成させたことが評価された。