投稿者: 谷 ちとせ

  • 平成22年度 土木学会関西支部技術賞

    平成22年度 土木学会関西支部技術賞

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    技術賞

    【対象業績】
    大規模開削による大断面4連アーチカルバートの施工
    4連アーチカルバート完成写真(起点側より)
    4連アーチカルバート完成写真(起点側より)
    【受賞者】
    西日本高速道路株式会社関西支社枚方工事事務所
    (株)大林組・青木あすなろ建設(株)・(株)松村組特定建設工事共同企業体
    鹿島建設(株)・(株)熊谷組・みらい建設工業(株)特定建設工事共同企業体
    【受賞内容】

     第二京阪道路は、京都と大阪を結ぶ延長約28.3kmの道路で、6車線の自動車専用道路と2~4車線の一般道路からなる一般国道1号のバイパスである。本道路の打上工事および国守工事区間では、寝屋川市域の閑静な住宅街が広がる丘陵地において、最大掘削幅約62m、最大掘削深さ約28mの大規模開削を行い、わが国でも例を見ない大断面の4連アーチカルバートを構築した。本構造物では、上床版と底版にアーチ形状を採用した結果、ボックスカルバート形状と比べて、部材厚が約60%程度に抑えられ、コスト削減を図ることができた。
     本工事は、住宅密集地での大規模開削工事であったため、周辺環境への配慮が必須であるとともに、現場条件等から工期短縮が命題であった。また、アーチルーフと側壁・隔壁の接合部分が非常に大きな断面であるため、コンクリート硬化時の水和熱に起因する有害な温度ひび割れの発生が懸念された。
     これらの課題解決のため、工事エリア周辺の騒音・振動測定を行うとともに、アーチカルバートの各部材の製造にあたっては、工場生産方式の採用により工期短縮を図り、さらにはパイプクーリングによる温度ひび割れ対策等を行い、工事を完成させた。
     本業績は、合理的な4連アーチカルバートの設計・施工方法を確立したこと、様々な取組みにもとづく工程短縮の実現により第二京阪道路の全線供用に貢献したことなどが評価された。


    【対象業績】
    耐震性能グレードを考慮したハーバーハイウェイ長大橋部の耐震補強事業
    耐震補強工事が完成した神戸大橋
    耐震補強工事が完成した神戸大橋
    【受賞者】
    神戸市みなと総局
    大日本コンサルタント株式会社大阪支社
    株式会社建設技術研究所大阪本社
    ショーボンド建設株式会社近畿圏支社
    【受賞内容】

     兵庫県南部地震以降、橋梁の耐震補強が鋭意実施されているが、既設長大橋の耐震補強設計においては、これまでのように弾性設計の範囲内に一律に抑える仕様設計では対応困難なものも多く、その技術的難易度・投資額の側面から、一般高架橋の耐震補強に比べて、遅れをとっているのが現状である。
     このような状況の中、神戸港港湾幹線道路ハーバーハイウェイの6つの長大橋の耐震補強事業計画を立案するにあたり、構造性・施工性・経済性・維持管理において合理的な耐震対策を行うため、各長大橋の機能と役割に基づき、個別に耐震性能グレード(要求性能)を設定した耐震補強設計を実施した。
     この設計方法は従来の仕様設計の枠を超えた新たな性能設計の考え方であり、各長大橋の構造条件や地盤条件、また、兵庫県南部地震の損傷状況や復旧実績を考慮し、局所的な損傷許容箇所と守るべき補強箇所のポイントを絞り、きめ細かくメリハリをつけた合理的で新しい耐震補強設計として具体化したものである。
     本業績は、長大橋の耐震補強事業計画において、橋梁の目的別に重要度を分けた性能設計を新たに採用したこと、長期間の交通規制を伴わない施工期間の短縮(工期:約1年)や経済性等の観点から地域への貢献度が高いことなどが評価された。


    【対象業績】
    阪神高速神戸山手線(南伸部)の建設 -密集市街地を貫く開削トンネル-
    密集市街地に位置する神戸山手線(南伸部)
    密集市街地に位置する神戸山手線(南伸部)
    【受賞者】
    阪神高速道路株式会社神戸建設部
    【受賞内容】

     阪神高速神戸山手線は、平成15年に7号北神戸線(白川JCT)から神戸長田出入路までの7.3kmが開通し供用されていたが、平成22年12月に3号神戸線と接続する3号神戸線(湊川JCT)までの『南伸部』1.8kmが開通し、延長9.5kmの自動車専用道路として完成した。
     当該路線の整備により、神戸市西部地域における自動車専用道路ネットワークが強化され、交通の分散、円滑化が進むとともに、地震等の災害にも強い代替性、補完性を有する幹線道路ネットワークの充実が図られる。加えて、一般道路の慢性的な渋滞が緩和されることにより、周辺環境への環境負荷低減にも寄与する。
     今回の工事区間は、新湊川の右岸沿いに位置し、密集市街地を通過することを考慮して全線地下構造となっている。また、この区間は、神戸市街を南北に通過するため、複数の営業中鉄道、幹線道路、ライフライン等の重要構造物と交差、近接するなど非常に厳しい施工条件であった。そこで、新たに開発された「自動変位制御システム」を用いた地下構造物の仮受け(国内最大級の規模)技術を始めとし、高度な解析・設計・施工技術を駆使して、狭隘な地下空間での難工事を完成させた。
     また、3号神戸線と接続する湊川JCT部では、既存技術(構造物の診断技術、鋼・コンクリート複合構造、耐震補強等)を最大限活用し、既設の湊川出入路の構造物を可能な限り有効利用することにより、コスト縮減、工期短縮および廃棄物削減を図った。
     本業績は、密集市街地おける近接構造物が輻輳した厳しい施工環境を克服し、工事を完成させたこと、完成後の渋滞緩和、利便性の向上など地域への貢献度が高いことなどが評価された。

    技術賞特別賞

    【対象業績】
    既設管渠の直接切削による管渠同士の推進地中機械式側面接合について
    推進機及び切削接合イメージ
    推進機及び切削接合イメージ
    【受賞者】
    大阪府東部流域下水道事務所
    中林建設株式会社
    【受賞内容】

     寝屋川流域整備計画は、流域面積268km²の約4分の3を雨水が自然に河川へ流れ込まない「内水域」が占める寝屋川流域において、増大する雨水流出量に対処すべく河川と下水道が一体となって40年に1度の降雨に対応させようとする総合的な治水対策である。
     本業績は、この計画に基づき既存の下水管(合流式)の能力不足を補う第2の下水管として新たに「増補幹線」を計画し、大阪の大動脈である大阪中央環状線直下において、既に施工が完了している地下河川(内径Φ6,900mm)と増補幹線 (内径Φ3,000mm)を地中接合したものである。
     工事は、大口径・大深度の高水圧下(土かぶり21m)で作業等をする条件から、従来行われてきた地上からの薬液注入・地盤改良・凍結等の補助工法を行うには、交通規制による影響や施工に対する安全面などに大きな課題があった。
     そのため、地上からの補助工法を必要としない「機械式地中接合(MELIT工法)」を用いてこれら課題を克服した。これは、1つの掘進機で推進工事と既設管渠の切削接合の両方を行う工法で、コピーカットされたカッターアームを用い通常の掘進機同様に掘進を行い、既設管渠切削時には、内蔵された切削リングを油圧ジャッキにより伸長させ、その先端部に設けられた自生刃ビット(超硬チップ)により既設セグメントを直接切削するものである。
     本業績は、地上の施工空間確保が困難であるとともに大深度という厳しい施工条件において、新技術を導入し安全・確実に地中管渠接合を成し遂げたこと、今後、技術改良を行いつつ同種工事への活用が期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    JR嵯峨野線複線化工事の完成
    JR嵯峨野線複線化工事(複線化区間を走行する列車)
    JR嵯峨野線複線化工事(複線化区間を走行する列車)
    【受賞者】
    西日本旅客鉄道株式会社
    京都府
    京都市
    【受賞内容】

     JR嵯峨野線は京都駅から京都市、亀岡市をとおり、南丹市の園部駅に至る全長34.2kmの路線である。本工事は嵯峨野線京都~園部間に存在する部分的な単線区間を複線化し、同区間を全線にわたって複線化するものである。施工範囲が広域にわたり、狭隘な住宅密集地や軟弱地盤、山間部などの様々な条件下で工事を実施した。
     構造物では、直接基礎と杭基礎の特性を合わせ持つシートパイル基礎や、セメント改良礫土とジオテキスタイルを組み合わせたスラブ版で支持する地盤改良技術の適用など新技術を導入するとともに、上・下線分割施工を前提とした2線2柱式高架橋や、非自立性地山でのグラウンドアンカー式土留工の本設利用など、鉄道では事例の少ない構造を採用し、コストダウンやメンテナンス性の向上等を図った。
     施工面では、交通量の多い主要道路上の桁架設や、鋼桁からボックスカルバートに一晩で置換えるなど、制約条件の多い工事に対して事前検討を積み重ね、無事故で完遂させた。 嵯峨野線は国鉄時代から順次輸送改善工事を実施してきており、本工事で複線化工事が全て完了したことにより、所要時間の大幅な短縮や列車の増発や等間隔での列車運行が可能となった。
     本業績は、困難な施工環境のもと、新技術を導入するとともに工夫を凝らして多種多様な工事を完成させたこと、複線化工事の完成により地域の利便性向上等が期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    西日本の活力を支える阪神港スーパー中枢港湾の整備と供用
    供用開始後の阪神港(神戸港)PC-18高規格コンテナターミナル
    供用開始後の阪神港(神戸港)PC-18高規格コンテナターミナル
    【受賞者】
    国土交通省近畿地方整備局神戸港湾事務所
    国土交通省近畿地方整備局大阪港湾・空港整備事務所
    【受賞内容】

     日本の港湾の相対的地位が低下する中、神戸港・大阪港は国際競争力を強化するため、平成16年7月にスーパー中枢港湾「阪神港」として指定を受け、大規模コンテナターミナルの効率的・一体的な運営と近隣港湾の相互連携を図るため、ハードとソフトの両面から取組を進めている。
     ハード面では、コンテナ船の大型化に対応すべく、神戸中央航路の浚渫工事を実施した。その際、船舶航行状況監視システムを導入し、全ての船舶動向を一元管理して航行の安全を確保した。また、土砂処分場の容量不足に対応するため、バージアンローダ船用施工管理システムを導入し、揚土配管に設置したγ密度計等により加水ポンプの注水量を管理・調整することによって、過剰な注水を減らし含水率の小さい状態を維持しながら浚渫土を処分場に揚土した。
     ソフト面では、大阪港(堺泉北港含む)、尼崎西宮芦屋港及び神戸港を1つの港とする一開港化の実現によって、この中の2港以上に連続して寄港する船舶に対する入港料等のコスト削減を行うとともに、コンテナターミナル24時間フルオープン化に向けた支援などにより、コンテナ船が入港してから荷主が貨物を引き取るまでにかかる時間(リードタイム)が短縮された。また、大阪港においては、個々に運営していた3つのコンテナバースを一体的にすることにより、効率的なターミナル運営が実現し、コスト、スピード、サービスのハイレベルな提供が可能となった。
     本業績は、ハードとソフトの両面において高い技術や創意工夫を用い事業を完成させたこと、事業の完成により物流の円滑化・効率化が図られ利用者や地域に大きく貢献していることなどが評価された。


  • 平成21年度 土木学会関西支部技術賞

    平成21年度 土木学会関西支部技術賞

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    技術賞

    【対象業績】
    オールフリー形式長大斜張橋の大変位・大反力に適応するダンパーの開発
    東神戸大橋に設置されたダンパー
    東神戸大橋に設置されたダンパー
    【受賞者】
    阪神高速道路株式会社神戸管理部
    【受賞内容】

     東神戸大橋は、阪神高速道路5号湾岸線に架かる橋長885m、中央径間長485mの鋼斜張橋で、桁はダブルデッキワーレントラス形式、塔はH型、ケーブルは2面吊12段のハープ形式となっている。桁の支持形式は、橋軸方向を全支点可動とするオールフリー、橋軸直角方向は全支点で固定している。
     今回、レベル2地震動(将来想定される巨大地震動)に対する耐震性照査を行ったところ、橋軸方向に許容変位量の2~3倍に相当する変位が発生し、必要な性能を確保できなくなることがわかった。そこで、産官学連携により新たな橋軸方向変位制御装置を開発し、トラス桁(約14,000t)の地震時変位抑制と減衰機能を付加することに成功した。開発した変位制御装置は、抵抗力を与える「拘束ケーブル」と減衰を付加する「超高減衰積層ゴムダンパー」を組み合わせて一つの免震システムとしたものである。このようなシステムは前例がないため、採用にあたっては縮小モデルによる性能確認実験を行い、有効性を検証した。 この装置の設置により、巨大地震時の緊急輸送路である阪神高速湾岸線の機能が確保でき、今後は他橋への応用が可能と考えられる。
     本業績は、縦置きの積層ゴムと拘束ケーブルを組み合わせた独創的なダンパーを新たに開発したこと、他の長大橋梁の耐震性向上に寄与できる可能性があること、実験により有効性を確認し実用化に至っていることなどを評価された。


    【対象業績】
    合築による渋滞と浸水の同時解消~限られた市街地スペースの有効活用~
    新宝町跨道橋架設完了、(右下)仁和寺調節池完成(調節池内部)
    新宝町跨道橋架設完了、(右下)仁和寺調節池完成(調節池内部)
    【受賞者】
    大阪府枚方土木事務所
    【受賞内容】

     千里丘寝屋川線立体交差事業(事業費約17億円)は、京都守口線の慢性的な渋滞の緩和を図るため、都市計画道路千里丘寝屋川線と府道京都守口線が交差する新宝町交差点において千里丘寝屋川線を立体交差化するもので、橋長116mの3径間連続開断面箱桁橋、その両側に橋長48mの2径間連続中空床版PC橋×2橋(橋梁名:新宝町跨道橋)を整備した。
     また、この地域は降った雨が自然に河川に流入しない内水域で、浸水常襲地域として地元より浸水被害の早期解消が望まれていた。このため、流域調節池事業(事業費約38億円)として、交差点北側の橋梁の地下部に、貯留量16,000m³を有する調節池(大雨時に一時的に雨水を貯留する施設)を、新宝町跨道橋基礎との一体構造により築造し、貴重な市街地の地下空間を有効活用した。
     これらの事業により、渋滞緩和と大雨による浸水被害の軽減という、この地域の2つの大きな課題を一挙に解決し、さらに、この合築の相互効果により橋梁基礎構造の削減や調節池浮力対策の削減等で、合計約3億5千万円の事業費を削減するとともに、今後の調節池候補地選定に対して大きく可能性を広げた。
     本業績は、渋滞と浸水の2つの課題について橋梁と調節池の合築という独創的な方法で解決を図っていること、合築により限られた都市空間の有効活用とコスト縮減が図られていること、地域の利便性及び安全性向上に大きく寄与していることなどを評価された。


    【対象業績】
    厳しい地盤条件を克服しスーパー中枢港湾を支える『夢咲トンネル』の建設
    供用開始後の夢咲トンネル(夢洲側坑口)
    供用開始後の夢咲トンネル(夢洲側坑口)
    【受賞者】
    国土交通省近畿地方整備局大阪港湾・空港整備事務所
    【受賞内容】

     夢咲トンネルは、スーパー中枢港湾阪神港(大阪港)の中核機能となる夢洲コンテナターミナルを整備中である夢洲(ゆめしま)と港湾機能の中心である咲洲(さきしま)を直結するために建設された施設延長約2.2km(うちトンネル部約1.5km)の臨港交通施設である。
     特に、着工当初海面であった夢洲側については、夢洲地区の開発と並行して工事を進める必要があり、工程上、埋立直後の超若齢地盤下での大断面開削施工を余儀なくされた。このため、掘削工事時には土留鋼管杭の変位などが発生し、地盤条件の詳細な把握や応力軽減対策を検討実施しながら施工を進める必要が生じた。
     また、海底トンネル部は多数の船舶が往来する主航路を横断する位置にあることから、大阪港を利用する船舶の安全な航行に配慮することが必要であり、船舶可航幅の確保、海上施工期間の短縮に努めるなどの工夫が求められた。
     このような厳しい条件を克服し、平成21年8月に夢咲トンネルの供用を開始し、これにより両地区は直結され、大阪港臨海部の交通機能を飛躍的に向上させた。
     本業績は、超若齢地盤の開削施工において土留鋼管矢板内部の補強や計測監視の強化を行い困難な工事を克服したこと、将来予想される地盤沈下による変位に対し沈埋トンネルの新たな継手構造等を開発したこと、交通ネットワーク上重要な施設を早期に完成させたことなどを評価された。


    【対象業績】
    JR姫路駅付近連続立体交差化事業 ~播但線・姫新線高架化完成~
    播但線電車が走る旧高架橋(当日撤去)と横取り架設する新高架橋
    播但線電車が走る旧高架橋(当日撤去)と横取り架設する新高架橋
    【受賞者】
    西日本旅客鉄道株式会社
    兵庫県
    姫路市
    【受賞内容】

     本事業は、JR姫路駅付近の山陽本線・播但線・姫新線を高架化することで踏切を撤去し、交通の円滑化と市街地の一体化を図るものであり、鉄道跡地を活用した高度な土地利用と都市基盤整備の促進が期待される。鉄道高架は平成2年に工事着手し、平成18年の山陽本線高架化の後、2期工事を進め、平成20年12月に播但線と姫新線の高架切換を終え、全線の高架化が完成した。
     線路切換のうち播但線取付部では旧高架橋の撤去と新高架橋の横取り架設という大規模工事を、限られた時間の中、かつてない厳しい許容誤差(鉛直-4~+2mm、水平±5mm)のもと行う必要があったが、高架橋の位置調整機能の確保、基礎の沈下量予測、高架橋(SRC造)の出来形管理など事前に検討を積み重ね、難工事を完遂させた。
     姫新線、播但線ともに営業線等で挟まれた狭隘な場所での施工であったが、「セメント改良補強土橋台」や「シートパイル基礎」等の新技術を駆使し、構造のスリム化を図り構築を可能とした。また、従来のラーメン橋台に代えて基礎連結式橋脚を全面採用し、耐震性を向上させるとともに、配筋競合箇所の減少による施工性向上を図り、品質確保を確実なものとした。
     本業績は、綿密な検討と高い施工技術により列車運休を最小限に抑えつつ高精度で工事を完成させたこと、狭隘な箇所でセメント改良型補強土橋台等の新しい技術を駆使して構造物の築造を行ったこと、地域の道路渋滞の緩和や分断された市街地の一体化等に大きく寄与することなどを評価された。


    【対象業績】
    世界最大級円形ニューマチックケーソン工法による調節池の築造
    新家調節池 ニューマチックケーソン工法施工状況と完成パース(左上)
    新家調節池 ニューマチックケーソン工法施工状況と完成パース(左上)
    【受賞者】
    大阪府八尾土木事務所
    大林組・大本組・みらい建設工業・ベクテル共同企業体
    【受賞内容】

     低平な寝屋川流域の約3/4は、雨水が自然に河川に流れ込まない内水域となっており、降雨量が河川への排水能力を超えた場合には下水道等から水が溢れ出す内水浸水が多発し、大阪府を中心に総合治水対策の整備が進められている。
     新家調節池は、大阪府八尾市北西部における10年に1度の確率でおきる大雨時に、流域下水道の能力を上回る雨水を一時的に貯留する外径50.6m、深さ49.8mの容量約50,000m³の円形の地下調節池である。大深度大型地中構造物を精密機械工場が隣接する市街地に構築する必要性から、広い作業ヤードを必要とせず、地盤・地下水等の周辺環境に及ぼす影響が小さいニューマチックケーソン工法を採用した。また、本事業はこの工法での円形構造物としては世界最大級の底面積を有している。
     ケーソンの沈設にあたっては、急激な沈下や傾斜、作業員の高気圧障害の発生、ケーソンショベルの無人掘削時の接触等のリスクが想定されたため、ケーソン躯体や、地盤等の計測管理を綿密に行うとともに、作業員の入函管理システム、ケーソンショベル衝突防止システムを導入した。
     また、躯体コンクリートの築造では、温度応力によるひび割れの発生が懸念されたため、低熱セメントやひび割れ制御鉄筋等を用いるとともに、初期掘削の沈下及び傾斜抑制対策として、サンドマットの敷設や圧気の早期開始等を実施し、高耐久で高品質な構造物の築造を行った。
     本業績は、計測管理システムや入函管理システム等を駆使して総合的な沈設管理を行って高い精度と作業員の安全を確保しつつ困難な工事を完成させたこと、ひび割れ制御や初期掘削対策を実施して高品質な構造物を築造したこと、地域の浸水被害の軽減に大きく寄与することなどを評価された。

    技術賞特別賞

    【対象業績】
    LED道路照明灯の開発及び青白色LEDを活用した犯罪抑止効果等の研
    新しい灯具、右:青白LED現地実証試験状況
    新しい灯具、右:青白LED現地実証試験状況
    【受賞者】
    大阪府茨木土木事務所
    【受賞内容】

     安全性確保、環境負荷低減、維持管理費軽減等の長所を併せもつLED道路照明灯について、平成17年度より、全国に先駆け開発等を行ってきたが、放熱技術、高効率の灯具、照射技術等の点で課題があった。
     しかし、研究を重ねた結果、小灯具を複数個配置し、必要な各方向に照射できる機能を持たせ、また、それらをアルミで屋根のように覆うように一体化させて、小灯具と覆いの間に空気層(自然放熱層)を設けることにより、これらの課題を解決した先駆的な灯具が開発できた。
     これにより、全国的にLED道路照明灯の普及が加速するとともに、身近な公共施設照明でのLED化が進み、国民への環境啓発に繋がることが期待される。 また、平成18年度より、心理、生理学の面から、室内外で青白LED灯と橙色のナトリウム灯との比較実験や、印象評定及び住民への心理学アンケートなどの研究を行い、青白LED照明が交通事故防止や犯罪抑止に効果があることが認められた。
     本業績は、多くの課題を解決し先駆的にLED道路照明灯の実用化を果たしたこと、これらの技術を活かし今後の普及発展が期待できることなどを評価された。


    【対象業績】
    大阪の大動脈を支える鳥飼大橋の架け替え
    渡り初めの状況(平成22年2月20日)[一番手前が新しい橋梁]
    渡り初めの状況(平成22年2月20日)[一番手前が新しい橋梁]
    【受賞者】
    大阪府枚方土木事務所
    大阪府茨木土木事務所
    【受賞内容】

     大阪圏の交通の大動脈・主要地方道大阪中央環状線の鳥飼大橋(北行)は、わが国初の有料道路橋であり、一級河川淀川を渡る橋梁として、昭和29年に架設された。
     現地は1日の交通量が9万台を超え、慢性的な渋滞が発生するとともに、近年の車両の大型化も加わって橋の老朽化が進行したことから、抜本的な対策が必要となった。検討の結果、車道を2車線から3車線に拡幅して交通の円滑化と耐震性の向上を図るため、橋梁を架け替えることとし、平成22年2月28日に車道3車線化の供用を開始した。(歩道は今後、旧橋撤去後に整備予定)
     新たな橋梁は、前後の取付道路や河川の計画高水位等の制約条件から、橋梁形式を9径間連続鋼床版箱桁橋とし、径間を既存の橋梁群とあわせるとともに橋脚断面を小さくして、河川阻害率の低減に努めた。
     また、淀川河川区域内での作業となることから、渇水期内に準備工から後片づけまでを終える必要があり、低水敷の下部工基礎は鋼殻ケーソン(ニューマチックケーソン工法)を採用し、上部工は合理化鋼床版(ボルト継手)とするなどの工期短縮の工夫を行い、疲労対策・コスト縮減等にも考慮した。
     本業績は、淀川渡河部等の諸制約の下で優れた計画や施工によって困難な工事を完成させたこと、道路ネットワークの耐震性向上や物流機能の強化に大きく寄与することなどを評価された。


  • 平成17年度 土木学会関西支部技術賞

    掲載の記事・写真・図表などの無断転載・使用を禁止します。
    著作権は公益社団法人土木学会関西支部および作者に帰属します。

    技術賞

    【対象業績】
    「ASR橋脚の維持管理マニュアル」の策定
    ASRによる橋脚のひび割れと補修完了状況
    ASRによる橋脚のひび割れと補修完了状況
    【受賞者】
    阪神高速道路株式会社
    【受賞内容】

     アルカリ骨材反応(Alkali-Silica Reaction= ASR)によるコンクリート構造物の劣化は、1980年代に日本各地で発見され、コンクリートクライシスとして大きな社会問題となった。阪神高速では、1982年に ASRによる橋脚の劣化を発見し、委員会などで検討を行った。その成果に基づいて維持管理指針やコンクリート表面保護工便覧を制定し、反応抑制対策などを行い、適切な維持管理を実施してきた。ところが1999年、橋脚梁部において鉄筋破断が発見されたため、緊急かつ新たな課題に対応すべく検討委員会を設置し、2005年、全国に先駆けて鉄筋破断に対応した「ASR橋脚の維持管理マニュアル」を制定した。 この維持管理マニュアルの特徴は、 1.鉄筋損傷の調査ポイントの明示 2.外観劣化度によるグレーディング管理の採用 3.性能照査、補修・補強の考え方の明示 4.追跡点検・モニタリング方法の明示 などが挙げられる。
     今後、構造物の高齢化が進み維持管理の重要性が一層高まる中で、この維持管理マニュアルは、全国のASR劣化構造物の維持管理において活用が期待される。
     本業績は、過去の技術的知見、デ-タおよび要素実験を基に作成され内容が充実していること、組織が一丸となり高い使命感を持ち先駆的、継続的に取組んだこと、実務者に分かりやすい形で纏められおり、今後のASR診断技術の先導的な役割を果たすと期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    切り替えて次世代につなぐ
    -神戸新交通ポートアイランド線延伸事業-

    三宮と神戸空港を結ぶ神戸新交通ポートアイランド線延伸事業
    三宮と神戸空港を結ぶ神戸新交通ポートアイランド線延伸事業
    【受賞者】
    神戸市企画調整局
    神戸新交通株式会社
    【受賞内容】

     神戸新交通ポートアイランド線は三宮とポートアイランドを結ぶ、昭和56年2月に我が国で最初に営業を開始した新交通システムである。神戸市では、その後もポートアイランド第2期や神戸空港の建設などの都市基盤の整備を進めており、本事業は、それらの事業と連携し、新たな交通需要に対応するとともに、既存路線の利便性を高めるため実施された。
     事業の計画、建設にあたっては、既存路線を活用することにより建設コストを大幅に削減し、既成市街地への環境・景観に配慮しつつ、神戸空港の建設やポートアイランド第2期の医療産業都市の形成などの周辺関連事業と連携しながら事業を進めた。また、無人自動運転の新交通システムの営業線としては史上初となる線路切り替え作業において、安全で確実な工事の実施、綿密な工程管理とリスク管理により予定時刻に無事営業を再開した。さらに、複合型新形式橋梁であるCFTガーダー橋の採用、空港連絡橋における道路橋との一体架設や大伸縮装置の考案など、様々な創意工夫を凝らして問題点を解決した。
     本事業は、このように新しい実績と貴重なデータの蓄積により、都市土木技術の発展に大きく寄与するとともに、利便性の高い都心型空港の形成と海上都市の発展に大きく貢献していくと考えられる。
     本業績は、鋼床板CFTガーダー橋の採用により景観性、経済性に優れた構造を確保したこと、無人自動運転の新交通システムの営業線においては史上初となる線路切り替えを綿密な施工計画の立案と安全な工事の実施により無事に行ったこと、様々な工夫を行うことで既存路線の活用を図り、効率的で経済的な事業を推進したことなどが評価された。


    【対象業績】
    近代土木遺産の再生
    ~日本最古の重力式コンクリートダム 布引五本松堰堤の堤体補強~

    布引五本松堰堤の堤体補強を中心としたリニューアル工事
    布引五本松堰堤の堤体補強を中心としたリニューアル工事
    【受賞者】
    神戸市水道局
    【受賞内容】

     布引五本松堰堤は、明治33年に建設された日本で最古の重力式粗石コンクリートダムである。本事業は、建設100年という節目を機に、堤体を新たな耐震基準に適合させることを主目的として、本格的なリニューアル工事を行ったものである。維持管理時代の先駆として、先人が様々な工夫を施して建造された土木遺産を、「当時の技術や景観を生かしつつ、現代の技術を加え、次世代に継承する」といった観点で設計・施工に創意工夫を加えて実施した。
     まず、建設当時の図面・書類から設計諸元や使用材料を明らかにし、経済性と要求性能の両立に配慮した。更なる100年も堰堤を供用するため、補強コンクリートを堤体上流面に増打ちを行い、堤体上流端に発生する引張力を解消し、耐震性能の向上を図ると共に、その優れた景観を継承するため、石張りによる表面処理を行った。また、管理橋の補強に際しては、建設当時の部材を出来るだけ残し、既設類似部材で補強するなど、現況と違和感のないよう配慮した。
     ダム周辺は自然環境に恵まれ、冬場はオシドリの飛来地として知られている。野鳥が安心して生息できるよう、潜堤築堤や堆積土砂の撤去にあたり、水面の広がりが確保出来るよう配慮した。また、より良い水辺環境の創出として、野鳥観察所等を整備した。
     本業績は、土木遺産の次世代への継承を「技術者としての思想」「市民との絆」の視点で捉え実現したこと、社会環境、周辺自然環境に配慮し近代土木遺産の現況を最大限保存した上で、堤体の耐震性の向上と貯水容量の回復を図ったこと、古い構造物の健全性を正確に診断した上で、新しい社会資本として再生した技術は、今後の同種事業への展開が期待できることなどが評価された。


    【対象業績】
    重交通交差部における老朽化橋梁の横梁移植プロジェクト
    -名神高速道路 下植野高架橋-

    下植野高架橋の横梁「移植」と鈑桁の「再利用」による連続立体ラーメン橋の完成
    下植野高架橋の横梁「移植」と鈑桁の「再利用」による連続立体ラーメン橋の完成
    【受賞者】
    西日本高速道路株式会社関西支社
    横河工事株式会社
    株式会社日本構造橋梁研究所
    株式会社フジエンジニアリング
    【受賞内容】

     昭和38年に供用を開始した名神高速道路の下植野高架橋は国道171号線を斜めに跨いで架設されており、鋼床版構造の横梁で鋼単純合成鈑桁を支持した橋梁であった。本橋は約40年間、重交通による載荷に耐えてきたが、横梁の構造上の問題から局部座屈及び疲労亀裂が発生するなど、危険な状況が進行していた。そこで、損傷対策と共に、車両大型化対応と耐震性能を確保するためのリニューアル工事を実施した。
     リニューアル工事では、構造上の問題を有する横梁とRC橋脚は撤去し、「移植」した新設横梁と再構築した鋼製橋脚を剛結した。また損傷の軽微な鈑桁は再利用し、横梁と剛結して連続立体ラーメン構造とした。これにより、耐力の増強、耐震性能の向上、及び沿道環境の改善を図った。
     また、鈑桁を高速道路上空に設けた架設桁で吊る「ガーダー・ハンガー・エレクション工法」により横梁を移植し、名神高速道路及び国道171号線の重交通への影響を最小限にして工事を実施した。人間に例えると臓器移植手術に匹敵する本設計・施工法は、困難を伴う都市内高架橋のリニューアルの一方法であり、今後多方面で応用が期待される。
     本業績は、道路交通や沿道環境などの厳しい制約下で困難を克服したこと、既存構造物を可能な限り活用したこと、社会資本の更新時代を迎えつつある中で、今後応用が期待できることなどが評価された。


    【対象業績】
    密集した市街地での4本併設、急曲線シールドトンネルの施工
    -大阪市営地下鉄第8号線4工区シールド工事-

    シールドトンネル完成パースと導入されるリニアモーター車両、シールドマシン、掘進完了状況
    シールドトンネル完成パースと導入されるリニアモーター車両、シールドマシン、掘進完了状況
    【受賞者】
    大阪市交通局
    大林・戸田・錢高・森本・奥村組土木特定建設工事共同企業体
    【受賞内容】

     大阪市交通局により整備が進められている地下鉄第8号線は、大阪市東部に位置する井高野から今里までを結ぶ建設延長12.1km、駅数11の路線で、平成18年12月の開業によって市域東部における公共交通の利便性は飛躍的に向上すると期待されている。このうち、4工区は8号線全路線の中でほぼ中央に位置し、本線シールド2本と出入庫線シールド2本、さらには開削工事2箇所を擁する大規模工事である。
     大阪内環状線直下では、これら4本のシールドトンネルが併設施工を行い、続いて大阪内環状線から国道163号線にかけて、本線シールド及び出入庫線シールドともに急曲線施工を行った。わが国の地下鉄工事において、4本併設と急曲線の連続施工はほとんど例がなく、施工にあたっては地盤変状の防止、先行トンネルを含む既設構造物への影響の抑制、併設区間と急曲線区間の連続掘進の円滑化を最重要課題とした。これらの課題に対して、併設部や急曲線部での適切な計測技術の採用と管理、施工条件下での裏込注入材の強度発現状況の把握、砂礫層における適正な泥水配合の把握等に努めた結果、課題を克服して竣工することができた。
     今後、市街地では地下構造物の輻輳化、地上構造物の密集化がより進むと考えられており、本プロジェクトは、そのような条件下で行われるシールド施工に大いに参考になると期待される。
     本業績は、市街地の軟弱地盤という厳しい環境の下、数々の工夫により周辺環境への影響を最小限に抑えながら、急曲線シールドを4本併設施工したこと、地下空間における有効活用の先例として活用が期待できることなどが評価された。

    技術賞奨励賞

    【対象業績】
    IT時代の大動脈”通信とう道”を守る
    ~既設シールドトンネルの新しい補強技術と変状監視技術~

    通信とう道の補強と変状監視
    通信とう道の補強と変状監視
    【受賞者】
    エヌ・ティ・ティ・インフラネット株式会社関西支店
    大阪市交通局
    財団法人地域 地盤 環境 研究所
    日本コムシス株式会社関西支店
    JFEエンジニアリング株式会社
    アイレック技建株式会社西日本営業本部
    【受賞内容】

     大阪東部を南北に縦断するとう道ルートの近傍に大阪市営地下鉄第8号線工事が計画され、その内、約2.5kmが近接施工区間となった。一部区間に、とう道との離隔が約1mの超近接施工箇所があり補強が必要となった。そこで、とう道に収容している通信ケーブルを撤去することなく補強が可能で、トンネル軸方向の変形追従機能を有する新しい補強工法を開発し採用した。
     また、約2.5kmにおよぶ近接監視区間と約5年間の長期計測を実施するにあたり、光ファイバをセンサとした監視システムを構築し、とう道の変状監視を実施した。光ファイバセンサの特性を活用した計測システムにより、従来の計測手法ではカバーできなかった連続的な長距離間のデータが取得され、かつ長期的なとう道構造物の監視が可能となった。
     今回のとう道補強及びとう道変状監視システムは、地下鉄工事の円滑な工事進捗と施工の安全に寄与したものと考えられる。また、これらの技術は、今後、近接施工に限らず、トンネルの維持管理に有効活用されるものと期待される。
     本業績は、情報化施工及び対策工法の一つとして効果的な技術を開発したこと、今後の地下空間における近接工事の先例として活用が期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    「震災10年いま新生のまち六甲道駅南地区」
    ~住民との協働による防災拠点整備~

    六甲道まちびらき
    六甲道まちびらき
    【受賞者】
    神戸市
    【受賞内容】

     神戸市は、阪神淡路大震災により壊滅的な被害を受けたJR六甲駅南側地区において、副都心として、また防災拠点としての復興を早期に図るため、六甲駅南地区震災復興第二種市街地再開発事業を計画した。 震災から2ヶ月後に行われた施行区域と主な都市基盤のみの「第1段階の都市計画決定」は、避難者への周知などが課題であった。しかし、復興方針を早期に明らかにすることにより、被災者のより早い生活再建に貢献できた。
     第2段階では、住民参加手法として「まちづくり協議会・まちづくり提案」方式を採用した。地区中央の防災公園(六甲道南公園)整備計画について、地元協議会のまちづくり提案を受け入れ、住民の意見を反映するため、ワークショップにより計画内容と管理方法について協議を重ね決定した。また、公園南側の広場部分では、国際記念コンペにより選ばれた案を基に整備した。平成17年9月、主要公共施設の整備が完了し、住民との協働により地域をあげてのまちびらき行事が行われた。
     この10年の「協働のまちづくり」による防災拠点整備の取り組みは、今後、不幸にして、何らかの災害が都市に発生した場合、復興計画への参考になるものと期待される。
     本業績は、震災後の新しいまちづくりとして、多くの困難を克服しながら、合意形成を意識した都市計画手法により、早期の復興を成し得たこと、行政と住民が一体となり地域協働のまちづくりを行ったことなどが評価された。


  • 平成16年度 土木学会関西支部技術賞

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    技術賞

    【対象業績】
    下弦ケーブルを用いた有ヒンジラーメン橋の補強設計と施工
    -喜連瓜破高架橋補強工事-

    喜連瓜破高架橋補強工事完成状況
    喜連瓜破高架橋補強工事完成状況
    【受賞者】
    阪神高速道路公団大阪管理部
    株式会社富士ピー・エス関西支店
    【受賞内容】

     阪神高速道路松原線喜連瓜破高架橋は1979年に建設された有ヒンジラーメン橋であり、ヒンジ部での顕著な垂下がりが確認され、対策を必要としていた。2002年時点の経過観測では、桁としては計画の高さから240mm、舗装のオーバーレイを行っていた路面でも約120mmの差を生じており、年変化量も5mm/年程度の進行を示していた。
     このヒンジ部の垂下がり抑止、たわみ回復を目的として、主桁下面に鋼製のストラット部材を設け、外ケーブルを偏心配置させる補強構造を初めて採用した。設計・施工にあたっては桁下の交差点交通に影響を与えないよう配慮するとともに、補強効果の確認のために、補強前後の実橋静的載荷試験、補強後の経過観測など各種計測・試験を行った。
     本補強工事により、40mmのたわみ回復量を得ることができ、路面での差の約1/3を解消することができた。また2005年1月時点の計測では、垂下がりの進行は認められていないことから本補強工法の有効性が確認された。
     本業績は、地域に配慮して施工中の街路交通に与える影響を最小限に抑えたことや、調査・工法の実施・効果の確認等に総合的な対応をしていること、今後の大きな課題であるメンテナンス分野において、同様の問題を抱える橋梁の対策工法としての活用が期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削
    -京阪奈新線 東生駒トンネル、北大和トンネル-

    閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削-けいはんな線 東生駒トンネル、北大和トンネル-
    閑静な住宅街で山岳トンネルを掘削-けいはんな線 東生駒トンネル、北大和トンネル-
    【受賞者】
    奈良生駒高速鉄道株式会社
    近畿日本鉄道株式会社奈良生駒高速鉄道新線工事事務所
    奥村・前田・五洋・不動特定建設工事共同企業体
    鹿島・飛島・東急・淺沼特定建設工事共同企業体
    大林・清水・戸田・村本特定建設工事共同企業体
    【受賞内容】

     けいはんな線(8.7km)は、奈良県北西部に位置し、開業後は大阪湾ベイエリアと関西文化学術研究都市とを結ぶ鉄道東西幹線軸形成の一翼を担う。路線の約6割がトンネルで、そのうち東生駒トンネル(延長3,625m)は、閑静な住宅地とゴルフ場直下(土被り60~70m)の岩盤地山、北大和トンネル(延長1,100m)は、閑静な住宅地直下(土被り7~26m)の未固結含水地山と、非常に厳しい条件の中で、安全性確保、環境保全を前提に経済性を追求してトンネル掘削を行った。
     施工に際しては、発破による騒音振動対策、盛土直下や断層湧水区間の地表面沈下対策が課題であったが、綿密な計測管理と計測結果を次の施工に反映して追加対策を実施し、徹底した情報化施工を行った。また地元とは、環境管理値、実測値等を積極的に情報開示し、現場見学会を開催することなどにより信頼関係を構築した。その結果、当初目標どおりの工期、工事費で工事を完成することが出来た。
     都市の高密度化、再構築に伴い今後も住宅地周辺でトンネル掘削を行う機会が増えるものと予想されるが、住宅地周辺で岩盤地山を発破方式、未固結含水地山を都市NATM工法により掘削した本事例は、大いに参考になるものと考えられる。
     本業績は、種々の厳しい条件下において、綿密な技術的対応、地域住民へのアカウンタビリティの積極的な実施、安全性の確保、住環境の保全、コストの削減等により今後の土木事業に何が必要であるかを明確に示したことや、鉄道の開業により地域の発展性を大きく創出することなどが評価された。


    【対象業績】
    震災復興事業に併せた神戸地区の鉄道整備とまちづくり
    震災復興のまちづくりにおける鉄道ネットワークの再構築と駅周辺整備の実施状況
    震災復興のまちづくりにおける鉄道ネットワークの再構築と駅周辺整備の実施状況
    【受賞者】
    神戸市
    西日本旅客鉄道株式会社
    【受賞内容】

     平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災により甚大な被害を受けた神戸市は、新長田・鷹取地区および東部新都心(HAT神戸)地区において、復興のまちづくりと連携し、以下のような鉄道ネットワークの再構築や駅周辺整備を行ってきた。

    1. 震災復興土地区画整理事業に併せた鷹取工場移転に伴う工場検修機能の再配置と、近畿圏内での効率的な車両運用が可能となる網干電車区の総合車両所化
    2. 東部新都心整備事業等で移転が必要となったJR貨物神戸港駅の代替地として、工場移転により機能停止となる鷹取駅構内の低効率用地を活用したコンテナ輸送形態の改善
    3. 貨物機能移転事業に併せた鷹取駅構内南北自由通路整備による、鉄道利用者への利便性向上とまちづくりにおける面的整備への貢献
    4. 震災復興土地区画整理事業における鉄道・工場用地を活かした防災拠点機能を有するまちづくり

     本事業は、震災復興にあたり、単なる鉄道施設の再整備にとどまらず、都市部における災害に強いまちづくりと鉄道整備とを一体化させて実施したという点では、過去事例の稀有な先駆的業績であり、地域への貢献度は極めて高いものであると考えられる。
     本業績は、震災というマイナスのインパクトを逆に利用し、都市の防災性向上という大目標を掲げ、官民が一体となって鉄道施設の効率的配置とまちづくりを密接に関連させつつ、震災地域の復興に大きく貢献するプロジェクトとして短期間に事業をまとめあげた点が評価された。


    【対象業績】
    日本初の一次覆工のみによる立坑の築造
    -箕面有料道路山岳トンネル築造工事(北工区)

    箕面トンネル換気立坑(施工中と完成後)
    箕面トンネル換気立坑(施工中と完成後)
    【受賞者】
    大阪府道路公社
    鹿島・大成・東亜・三井住友・青木あすなろ共同企業体
    【受賞内容】

     箕面トンネルは国道423号バイパスの中心となる延長5.6kmの山岳トンネルで、新御堂筋北部の北摂山地を貫き、北大阪地域と大阪都心部を結ぶ交通の主要路線となる有料道路トンネルである。構成としては、本坑、避難坑の他、地下換気所および換気立坑などを併設している。
     換気立坑は、331mにも達する大深度であるが、合理的な設計のもとに、従来の2層構造の覆工コンクリートに対して、配合および施工法の両面から耐久性を高めて1層のみの構造にして全体の覆工厚さを半減させた。つまり、覆工コンクリートの配合を高強度および高じん性に改良するとともに、密実にコンクリートを打設するため、従来の流込み打設に替えて、ポンプ圧送方式による打設を確立した。
     逆巻きコンクリートならではの打設の困難さや、湧水の集水方法などに苦労したが、独自の施工方法を確立し、問題点を克服した。
     換気立坑にシングルシェルを実現させたのは箕面トンネルが初めてであり、先駆的な取り組みによって3.5ヵ月の工期短縮と17%の工事費の縮減を達成することが出来た。
     本業績は、コンクリートの品質確保や打設方法等で様々な技術的な工夫を行うことにより、山岳トンネルにおいて通常施工される二次覆工を省略し、工期の短縮とコストの縮減を達成した先駆性やその判断、今後の高品質・高耐久コンクリート構造物への発展性が期待できることなどが評価された。


    【対象業績】
    阪南港 阪南2区 人工干潟の造成
    官民連携により早期造成を実現した阪南2区人工干潟
    官民連携により早期造成を実現した阪南2区人工干潟
    【受賞者】
    大阪府港湾局
    関西電力株式会社
    東洋建設株式会社
    【受賞内容】

     阪南2区人工干潟は、生物の生息・生育空間の創出や水質浄化機能の向上を目的として、大阪府岸和田市沖合に整備した潮間帯面積1.6ha(整備面積5.4ha)の人工干潟である。
     本事業は、民間企業と地方自治体が「大阪湾の自然再生」という目的に向かって連携し、民間の建設工事から発生する浚渫土砂を干潟造成に有効利用することにより、環境負荷低減と環境再生、干潟の早期造成、コストの削減を実現した事例である。
     今回の干潟造成は、高含水比で軟弱な浚渫粘土を用いた、8~11mという大水深での干潟造成となったが、室内実験と現地試験施工による検討を重ね、中仕切堤の築造と、大規模海洋工事では初めてとなる生分解性シートの採用により、潮間帯の確保や覆砂の浚渫粘土中への潜り込みの防止といった課題を克服し、大阪湾の干潟面積を大幅に増大させ、大阪湾再生に貢献するものである。
     今後も、航路浚渫等により浚渫土砂は継続的に発生すると予想され、本工事の成果は、軟弱な浚渫粘土を有効活用した環境再生の実現に大きく貢献するものと考えられる。
     本業績は、浚渫土砂処分と干潟の再生を官民の連携によりリンクさせ、環境負荷低減と環境再生、さらにはコストの縮減を同時に達成した先駆的事例であることや、環境に配慮した事例として、今後の同種事業への発展が期待できることなどが評価された。

    技術賞奨励賞

    【対象業績】
    構造物の鉛直、水平変位および傾斜角計測システムの開発と運用
    長区間多測点鉛直水平変位設置状況
    長区間多測点鉛直水平変位設置状況
    【受賞者】
    中央復建コンサルタンツ株式会社
    綜合計測株式会社
    大阪大学大学院教授 松井繁之
    【受賞内容】

     傾斜・上下不同変位および水平変位は構造物に悪影響を与える代表的な変状要素であり、正確な量的確認が大切である。特に、都市再生および都市機能改善を目的として、地下空間の高度利用が活発であり、既設構造物の直下あるいは直近工事も増加しており、既設構造物の変位管理計測は重要な土木技術分野となっている。一方、既設構造物は、経年劣化を伴い、変位・変状状態の管理が重要な要素となっている。その変位管理値は、1/10mmが要求精度であるが、従来型の計測器では精度の確保が困難である。特に水を利用した従来型の水管式沈下計は温度による影響が大きく、基本的な見直しが必要であるとされてきた。その理由は、温度変化による計測機器の見かけ上の変化を排除しにくいことである。そのため、新たなセンサーとして渦電流センサーに着目し、さらに計器の構造を根本から見直した新しい変位計測機器を開発した。本器は、非接触の状態で変位変化を高精度に測定することができ、また水中利用も可能である。
     今回、開発された鉛直、水平および傾斜測定器は、大気温度変化の影響を殆ど受けることがなく、従来型の計器で必要とされていた温度補正用の事前計測が不要となる。
    本業績は、「鉛直変位、水平変位、傾斜角」のト-タル計測システムとして開発され、より高精度な計測を実現し信頼性が高まったことや、現場の省力化の進展が大きく期待されることなどが評価された。


    【対象業績】
    南阪奈道路の建設
    「南阪奈道路」(美原ジャンクション)
    「南阪奈道路」(美原ジャンクション)
    【受賞者】
    国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所
    大阪府富田林土木事務所松原建設事業所
    奈良県高田土木事務所
    日本道路公団関西支社奈良工事事務所
    大阪府道路公社
    【受賞内容】

     南阪奈道路は、日本最古の官道「竹内街道」とほぼ並行し、延長16.9kmの大阪と奈良を結ぶ自動車専用道路であり、大阪府南河内郡美原町から奈良県北葛城郡新庄町に至る「平成の竹内街道」として、国土交通省・大阪府・奈良県・日本道路公団・大阪府道路公社の5者が協力して整備を行い、平成16年3月28日に全線一斉の供用開始を行った。
     美原JCTでは、阪和自動車道上空での電磁波対策を行いながらの超大型クレーンによる大ブロック桁架設、大黒トンネルでは文化財への考慮から低土被り工法での施工とした。また、国定公園内を通過することなどから、自然環境や周辺環境に配慮したデザイン等の採用や、竹内街道の歴史性を考慮した色彩の採用等、種々の取り組みを行った。
     南阪奈道路の開通により、大阪・奈良間の現道や、渋滞が恒常化しつつあった西名阪自動車道の渋滞緩和、および近畿圏中心部や関西国際空港と奈良県中南和地域間の大幅な時間短縮など、アクセスの向上や広域的ネットワークの形成により、地域の連携強化および活性化が期待されている。
     本業績は、5事業者の連携により長期にわたって様々な技術的課題に対応しつつ、景観への配慮、自然環境への調和を図りながら、地域の発展に大きく貢献する高速道路を完成させたことが評価された。